前世紀末より地球温暖化の可能性が議論されるなか,近年はSDGs (Sustainable Development Goals) やカーボンニュートラルに向けた動きが活発であり,さらに,より広範囲の産業,社会,経済の改革を含めたグリーンエネルギーへの転換(グリーントランスフォーメーション : GX)に向けた分析,予測や具体的な施策として各種プロジェクトが世界中で始まっています.
特別Webコラムは応用物理学会がカバーする多くの学術分野がGXに関する要素技術となっていることを背景に制作したもので,GX実現に向けての社会科学的な動向,環境,エネルギー面での様々な取り組みを学会内外の皆様に広くご理解いただくことを目的としています.

会長メッセージ
特別Webコラムに寄せて
2050年カーボンニュートラルのカギとなる,2S (Safety と Sustainability) を前提とした 3E (Energy, Environment, Economy) のバランスは,社会情勢や地域性にも大きく依存し,時空間的に変化する課題です.産業,社会,経済の改革を含めたグリーンエネルギーへの転換(グリーントランスフォーメーション : GX)に向けた分析,予測や具体的な施策として各種プロジェクトが世界中で始まっています.応用物理学の分野横断的なGXにより,このグローバルな課題解決の道筋を示してまいります.
特別Webコラム「GXに挑む応用物理」は,応用物理学会の学術分野の多くはGXにつながっていること,さらに知の融合による新たな価値創出の機会と捉え,企画いたしました.GX実現に向けての人文・社会科学的な視点,環境,エネルギーでのイノベーションに進展する技術などを,学会内外の皆様に広くご理解いただくことを目的としています.カーボンニュートラル実現には,応用物理が重要であることを改めて認識し,知の統合と創発,科学リテラシーの向上,小中高校生の理系進路選択などに役立てばと期待します.
応用物理学会会長
波多野 睦子
2021年11月
GX 特別Webコラム 編集委員会
2022年度
広報委員会長
関谷 毅(阪大)
編集委員長
下山 淳一(青学)
編集委員
秋永 広幸(産総研)
荒川 太郎(横国大)
⽯井 雄三(日本電信電話)
大島 武(量子研)
小野 篤史(静大)
鈴木 将之(同大)
筑本 知子(中部大)
浜屋 宏平(阪大)
オブザーバー
佐藤 信太郎(富士通)
2021年度
編集委員長
下山 淳一(青学)
編集委員
赤羽 浩一(NICT)
秋永 広幸(産総研)
石井 雄三(日本電信電話)
裏 升吾(工繊大)
佐藤 信太郎(富士通)
須田 淳(名大)
節原 裕一(阪大)
筑本 知子(中部大)
豊田 晴義(浜松ホトニクス)
西澤 典彦(名大)
オブザーバー
辰巳 哲也(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
西川 恒一(豊田中研)
納富 雅也(日本電信電話/東工大)
波多野 睦子(東工大)
平野 嘉仁(三菱電機)
藤原 康文(阪大)
環境
GXに貢献する超伝導技術—超伝導磁気分離技術は環境保全の立役者/西嶋 茂宏
森林・林業・木材におけるSDGsによるGX—電気で木材(樹木)の水分量を測る/鈴木 養樹
高感度環境分光計測の進展—持続可能社会の実現に向けた環境分光計測の役割/戸野倉 賢一総論
レーザーレーダー(ライダー)による大気環境計測—ライダーネットワークによる東アジア域エアロゾルの動態把握/清水 厚総論
波長掃引中赤外レーザーによる火山ガスの分光分析—環境ガス計測用,超小型波長掃引量子カスケードレーザーの開発/枝村忠孝
光散乱式微粒子センサ—エネルギーロス削減と快適性・生産性向上の両立に貢献する空気環境計測技術/中井 賢也
農学から発信される分光計測—近赤外分光計測を例として/土川 覚
プラスチックリサイクルに貢献する分光技術—分光技術により資源の循環的利用,環境負荷の軽減に貢献/渥美 利久
脱炭素に貢献する高温超伝導SQUID磁気センサ—野外で自在に使える超高感度磁気センサ技術として成熟した高温超伝導SQUIDはGXにも貢献/田邊 圭一
エネルギー
蓄エネ
創エネ・再エネ
主力電源としての太陽光発電技術—カーボンニュートラル社会の実現に向けてどのような太陽電池が必要となるか?/小長井 誠総論
III–V族化合物半導体太陽電池の現状と低コスト化による将来展望—超高効率太陽電池でゼロエミッション社会に貢献/菅谷 武芳,庄司 靖,大島 隆治,牧田 紀久夫
ペロブスカイト太陽電池の研究と期待—新型太陽電池が日本のGXに貢献する/五反田 武志
ショックレイ–クワイサー論文から考える太陽電池の動作—今でも色褪せないショックレイ–クワイサー論文/山田 明
次世代の高効率量子ドット太陽電池—新しい概念と材料でこれからの太陽光発電社会を支える/岡田 至崇
有機薄膜太陽電池の展望—環境にやさしい塗って作れる太陽電池技術でGXに貢献/尾坂 格
光ビームで実現する光無線給電—無線を広げて電気の制約を気にしない社会へ/宮本 智之
脱炭素社会に必要な革新的レトロテクノロジー—蓄熱発電/岡崎 徹
超電導リニアと中央新幹線—東京~大阪1時間が拓く日本の未来/北野 淳一
人工光合成—水と二酸化炭素を活用する太陽光エネルギーの貯蔵技術/森川 健志
火力発電の高効率化—材料開発による蒸気条件の高温・高圧化/屋口 正次
高効率なガスタービンコンバインドサイクルに不可欠なガスタービン翼の冷却技術—脱炭素へのトランジションを支える火力発電技術の基盤/高橋 俊彦,酒井 英司
省エネ
GXに貢献する超伝導技術—超伝導材料は天賦の省エネルギー材料 多様な応用でGXに貢献/下山 淳一総論
超伝導技術は大空へ—超伝導モータによる航空機推進系の電動化革命/寺尾 悠
GXに貢献するパワー半導体技術—パワーエレクトロニクスによる電力エネルギーの効率的利用/須田 淳総論
次世代パワー半導体材料:炭化ケイ素(SiC)—鉄道の省エネに絶大な貢献,新幹線にも搭載/須田 淳
世界を照らす窒化ガリウム(GaN)青色発光ダイオード(LED)—全発電量の7%削減の省エネ効果/須田 淳
窒化ガリウム(GaN)横型パワーデバイス—照明に続いてパワーエレクトロニクス分野でも省エネに貢献/須田 淳
パワー半導体の次のエースを求めて — 研究者の挑戦は続く:金属の「錆(さび)」が半導体?/藤田 静雄
“究極のエネルギー” 核融合を実証する実験炉ITER —カーボンニュートラル実現の鍵となるエネルギー源/近藤 貴
熱輻射を自在に制御する—様々なエネルギーの高効率な利用に貢献/浅野卓,井上卓也,野田進
電気自動車への走行中ワイヤレス給電—バッテリーの残量や資源の心配を克服した究極のエコカーを目指して/藤本 博志
高温超伝導誘導同期回転機—オームの法則を凌駕する超伝導材料で賢くて地球に優しい回転機の実現/中村 武恒
コラム一覧
- 2022.9.22
エネルギーE4‐1超伝導が拓(ひら)く次世代エネルギーインフラ —— エネルギー貯蔵機能を有する超伝導ケーブルによる再生可能エネルギーの大量利用東川 甲平
- 2022.9.22
エネルギーE2‐11高温超伝導誘導同期回転機 —— オームの法則を凌駕する超伝導材料で賢くて地球に優しい回転機の実現中村 武恒
- 2022.9.22
エネルギーE2‐6‐2窒化ガリウム(GaN)横型パワーデバイス —— 照明に続いてパワーエレクトロニクス分野でも省エネに貢献須田 淳
- 2022.7.15
エネルギーE2‐10電気自動車への走行中ワイヤレス給電 —— バッテリーの残量や資源の心配を克服した究極のエコカーを目指して藤本 博志
- 2022.6.28
エネルギーE2‐9熱輻射を自在に制御する —— 様々なエネルギーの高効率な利用に貢献浅野 卓,井上 卓也,野田 進
- 2022.6.21
エネルギーE3‐4高効率なガスタービンコンバインドサイクルに不可欠なガスタービン翼の冷却技術 —— 脱炭素へのトランジションを支える火力発電技術の基盤高橋 俊彦,酒井 英司
- 2022.5.16
エネルギーE3‐3火力発電の高効率化 —— 材料開発による蒸気条件の高温・高圧化屋口 正次
- 2022.5.11
エネルギーE2‐7パワー半導体の次のエースを求めて
—— 研究者の挑戦は続く:金属の「錆(さび)」が半導体?藤田 静雄 - 2022.3.11
エネルギーE1‐5ショックレイ–クワイサー論文から考える太陽電池の動作
—— 今でも色褪せないショックレイ–クワイサー論文山田 明 - 2022.1.25
エネルギーE2‐8“究極のエネルギー”核融合を実証する実験炉ITER
—— カーボンニュートラル実現の鍵となるエネルギー源近藤 貴 - 2022.1.21
社会科学S‐1総論カーボンプライシング —— カーボンニュートラルの選択肢有村 俊秀
- 2022.1.21
エネルギーE3‐1超電導リニアと中央新幹線 —— 東京~大阪1時間が拓く日本の未来北野 淳一
- 2022.1.21
エネルギーE4‐3低温技術と水素社会 —— 電気抵抗ゼロの高温超伝導材料と冷却特性に優れた液体水素の組み合わせによる高効率で高機能な電気機器の実現柁川 一弘
- 2022.1.14
環境K2‐1GXに貢献する超伝導技術
—— 超伝導磁気分離技術は環境保全の立役者西嶋 茂宏 - 2022.1.14
エネルギーE1‐9脱炭素社会に必要な革新的レトロテクノロジー
—— 蓄熱発電岡崎 徹 - 2022.1.14
エネルギーE1‐7有機薄膜太陽電池の展望
—— 環境にやさしい塗って作れる太陽電池技術でGXに貢献尾坂 格 - 2022.1.6
エネルギーE2‐3超伝導技術は大空へ
—— 超伝導モータによる航空機推進系の電動化革命寺尾 悠 - 2021.12.21
環境K1‐1総論高感度環境分光計測の進展
—— 持続可能社会の実現に向けた環境分光計測の役割戸野倉 賢一 - 2021.12.21
エネルギーE1‐8光ビームで実現する光無線給電
—— 無線を広げて電気の制約を気にしない社会へ宮本 智之 - 2021.12.21
エネルギーE2‐5次世代パワー半導体材料:炭化ケイ素(SiC)
—— 鉄道の省エネに絶大な貢献,新幹線にも搭載須田 淳 - 2021.12.17
環境K1‐5光散乱式微粒子センサ —— エネルギーロス削減と快適性・生産性向上の両立に貢献する空気環境計測技術中井 賢也
- 2021.12.16
社会科学S‐5化学産業が紡ぐ30年後の未来社会とイノベーション戦略
—— “Green Sustainable Economy”の実現に向けて坂下 幸雄 - 2021.12.16
エネルギーE2‐6世界を照らす窒化ガリウム(GaN)青色発光ダイオード(LED)
—— 全発電量の7%削減の省エネ効果須田 淳 - 2021.12.7
環境 K1‐4波長掃引中赤外レーザーによる火山ガスの分光分析
—— 環境ガス計測用,超小型波長掃引量子カスケードレーザーの開発枝村 忠孝 - 2021.12.7
環境 K1‐6農学から発信される分光計測
—— 近赤外分光計測を例として土川 覚 - 2021.12.7
環境 K1‐7プラスチックリサイクルに貢献する分光技術
—— 分光技術により資源の循環的利用,環境負荷の軽減に貢献渥美 利久 - 2021.12.3
環境 K1‐2総論レーザーレーダー(ライダー)による大気環境計測
—— ライダーネットワークによる東アジア域エアロゾルの動態把握清水 厚 - 2021.12.1
環境 K2‐2森林・林業・木材におけるSDGsによるGX
—— 電気で木材(樹木)の水分量を測る鈴木 養樹 - 2021.11.30
社会科学 S‐2総論世界のGX —— エネルギー業界におけるクリーン化の流れと革新的な技術の紹介廣田 周作
- 2021.11.26
エネルギー E4‐2GXに貢献する水素科学 —— エネルギーキャリアとしての水素をどう使いこなすか? ハイドロジェノミクスの挑戦折茂 慎一,佐藤 豊人,髙木 成幸
- 2021.11.25
エネルギー E4‐4大容量・高エネルギー密度・長寿命を特長とするNAS®電池
—— NAS®電池は世界に広がる新たなエネルギーソリューションに対応し,その普及・発展に貢献します斗野 綱士 - 2021.11.17
エネルギー E3‐2人工光合成
—— 水と二酸化炭素を活用する太陽光エネルギーの貯蔵技術森川 健志 - 2021.11.15
社会科学 S‐3GXと自律分散社会 —— Society 5.0とカーボンニュートラルの両立に求められる自律分散社会とその課題伊藤 智
- 2021.11.15
社会科学 S‐4IoT社会を支える自立電源技術:環境発電
—— 多種多様なエネルギー変換技術で持続可能な社会の実現に貢献竹内 敬治 - 2021.11.15
エネルギー E2‐4総論GXに貢献するパワー半導体技術 —— パワーエレクトロニクスによる電力エネルギーの効率的利用須田 淳
- 2021.11.1
環境 K1‐8脱炭素に貢献する高温超伝導SQUID磁気センサ —— 野外で自在に使える超高感度磁気センサ技術として成熟した高温超伝導SQUIDはGXにも貢献田邊 圭一
- 2021.11.1
エネルギー E1‐1総論主力電源としての太陽光発電技術 —— カーボンニュートラル社会の実現に向けてどのような太陽電池が必要となるか?小長井 誠
- 2021.11.1
エネルギー E1‐3III‐V族化合物半導体太陽電池の現状と低コスト化による将来展望
—— 超高効率太陽電池でゼロエミッション社会に貢献菅谷 武芳,庄司 靖,大島 隆治,牧田 紀久夫 - 2021.11.1
エネルギー E1‐4ペロブスカイト太陽電池の研究と期待
—— 新型太陽電池が日本のGXに貢献する五反田 武志 - 2021.11.1
エネルギー E1‐6次世代の高効率量子ドット太陽電池
—— 新しい概念と材料でこれからの太陽光発電社会を支える岡田 至崇 - 2021.11.1
エネルギー E2‐1総論GXに貢献する超伝導技術 —— 超伝導材料は天賦の省エネルギー材料 多様な応用でGXに貢献下山 淳一
© 1999-2023 The Japan Society of Applied Physics (JSAP).
社会科学