半導体製品のサステナビリティ貢献への取組 鷹本勝 ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 特別WEBコラム GX : グリーントランスフォーメーションに挑む応用物理
はじめに
ソニーセミコンダクタソリューションズグループ(以下SSS)はイメージング&センシングテクノロジーを強みとした,さまざまな半導体デバイス事業を手がけています.メインプロダクトであるイメージセンサーは,レンズから入った光を電気信号に変換する「電子の眼」として,私たちの日々の生活や社会のいたるところで活用されています.デジタルカメラなどの,人間の眼で見える光景を画像データ化するイメージング用途に加え,近年は製造現場で使われる特殊なカメラ(UV:紫外線,IR:赤外線,偏光など)のような,人間の眼には見えないさまざまな情報を取得・認識するセンシング用途にまで活躍の場を広げつつあります.SSSは,2007年に高速,低ノイズを実現した独自のカラムアナログ・デジタル(A/D)変換回路搭載のCMOSイメージセンサーを,2009年には従来比2倍の感度を実現した裏面照射型CMOSイメージセンサーを商品化し,その性能はCCDイメージセンサーを超えるまでになりました.さらに2012年には画素部分と信号処理部分の積層構造により,高画質,多機能,小型を実現した積層型CMOSイメージセンサーを商品化,2015年には小型,高性能,生産性向上を実現したCu–Cu(カッパー・カッパー)接続を世界に先駆けて実用化するなど,技術革新を重ね,常に業界をリードしています.
サステナビリティへの取組
私たちの半導体を中心とする事業活動は,健全な地球環境と社会があって初めて成り立つものだと考えています.この地球環境や社会に対して果たすべき「責任」と「貢献」を常に意識し,さまざまな活動を進めています.それらを実現するためにSSSでは「地球・社会・人」のために「ありたい姿」を定め,共感いただけるさまざまなパートナーとサステナブルな社会に貢献していく方針として「サステナビリティコンパス」を策定しました.
本コラムでは7つの社会像のうち半導体を用いたリサイクルされている社会への貢献について紹介します.
リサイクルされている社会への貢献
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わるものとして,持続可能な循環型社会の形成が求められています.世界各地域で進んでいるリサイクル事業への取り組みはその一環です.リサイクルにおける分別作業の多くは作業員の手作業に依存しており,その効率化が求められています.SSSのイメージセンシング技術は,そうしたリサイクル事業の効率向上に貢献しています.
材料選別
リサイクルの現場では,透明な素材群を材料別に選別することが必要な時があります.可視光カメラではその区別は困難ですが,UVイメージセンサーを活用すれば,紫外線(ultraviolet:UV)波長域における各材料の光吸収率,透過率の違いにより,その材料の差を異なるイメージとして可視化できるため,選別が可能となります.短波長赤外(short wavelength infra–red:SWIR)も同様に活用が可能です.複数のSWIR波長の光を切り替え,それぞれSWIRイメージセンサーで撮像すると,素材ごとに選別することができます.
形状認識
リサイクル用の高速のラインでは,スクラップ前にペットボトルとそれ以外を分別する作業や,ボトルをサイズで分別する作業があり,高速で対応できる高解像度のイメージセンサーが活躍しています.Pregius™/Pregius S™技術搭載のグローバルシャッター式イメージセンサーは,小型かつ高解像度で,高速撮像における形状認識力に優れており,分別精度の向上と時間短縮に貢献します.
実際の適用した事例を紹介します.ノルウェーで設立されたTOMRA社(TOMRA Systems ASA)は,1972年に使用済み飲料容器の自動回収機を開発,製造販売をスタートさせました.TOMRA社の自動回収機は,使用済み飲料容器の選別・分別・保管だけでなく,利用者への特典付与にいたるまでの一連の処理を行う機器です.これは,デポジットリターン制度がある地域で導入が進んでいるサービスで,店舗に置かれた自動回収機に,利用者が使用済み飲料容器を投入すると,機器に内蔵されたカメラにより自動的に選別・分別され,現金がその場で戻ってくる仕組みです.日本では,店舗で使えるポイントカードのポイントに還元されます.消費者をお待たせせず,エラーなく満足なリサイクルの体験を提供するには,持ち込まれた大量の飲料容器をそれぞれ1秒程度で識別し,容器の形状やバーコードを,間違いなく高速で読み取る必要があります.そのためには,カメラが高速に被写体を撮影し,高精細であるだけでなく,ノイズが少ないことが求められます.
必要な要素として4つのポイントがありました.
- 1. 高速撮像能力:高速でボトルを分別できる.
- 2. 高解像度:容器の形状や材質を精度よく判別できる.
- 3. 低ノイズ:映像ノイズが少ないのでバーコードの読み取りに向いている.
- 4. 歪みがない:高性能のグローバルシャッター技術により,高速で動くボトルを歪みなく撮影できる.
グローバルシャッター技術(Pregius)搭載イメージセンサーは,TOMRA社の自動回収機のFlowシリーズのカメラに搭載され,その性能の向上に貢献しました.360度の全方位からの容器のバーコードを読み取る機能や,高速で動くボトルの輪郭を精細にとらえる性能の実現がその一例です.このイメージセンサーの採用で,システム全体の処理スピードと精度が向上しました.TOMRA社の目指すクリーン・ループ・リサイクルの実現に,SSSの技術が貢献しています.
おわりに
今回,サステナブルな社会を目指す企業姿勢と実際の適用事例を交えて紹介しました.一見,環境に貢献できるかがわからない技術であっても,貢献できる可能性があります.それはかかわる技術者,ステークホルダが環境問題を意識することで,繋がり,実現できると考えています.SSSでは冒頭に示したサステナビリティコンパスの実現に向けて取り組んでいきます.
Pregius/Pregius Sおよびそれらのロゴは,
ソニーグループ (株) またはその関連会社の登録商標または商標です.

