国内有力企業が集結する
半導体の先端材料・製造装置・集積プロセスの最前線 シンポジウム「最先端ロジック半導体と連携・協働する材料・プロセス・実装技術の最前線 〜再起する日本の先端ロジック半導体・その2〜」
【開催概要】
- 最新の日本の半導体政策について,経済産業省の金指壽氏が登壇.
- 最先端ロジック半導体のデバイス・プロセス技術に通じる東京大学の平本俊郎教授が登壇.
- 革新的チップレット技術の未来を展望するRapidus株式会社の折井靖光氏が登壇.
- 車載SoCの最先端を開拓するASRA・株式会社ミライズ テクノロジーズより岩城隆雄氏が登壇.
公益社団法人応用物理学会(東京都文京区)は,第85回応用物理学会秋季学術講演会(2024年9月16日(月)~20日(金))を朱鷺メッセ(新潟市)ほか2会場およびオンラインで開催します.その一環として,2024年9月16日(月) に一般の方を対象とした一般公開シンポジウムをA41会場(朱鷺メッセ国際会議室)およびオンラインのハイブリッドで開催.このシンポジウムは,先端ロジック半導体製造における先端材料・製造装置・集積プロセスに関わる工学技術の動向について幅広く紹介・議論します.日本のこれからの半導体政策について経済産業省の金指壽氏,先端ロジックデバイスの技術トレンドを東京大学の平本俊郎氏がそれぞれ講演.さらに革新的チップレット技術開発を進めるRapidus株式会社から折井靖光氏,日本のシリコンウエーハ技術の最先端をいく株式会社SUMCOから松川和人氏,先端ロジックデバイスにおけるプラズマエッチング技術を開発する株式会社日立ハイテクの伊澤勝氏,高性能な半導体パッケージを開発する新光電気工業株式会社の三木翔太氏,車載SoCの最先端を開拓するASRA・株式会社ミライズ テクノロジーズより岩城隆雄氏を招き,ご講演をいただきます.シンポジウムの参加申込は下記をご覧ください.皆様のご参加をお待ちしております.
先端ロジック半導体の革新を支える技術たち
近年,先端ロジック半導体に関するニュースは多い.例えば半導体の受託生産において世界最大手である台湾の半導体企業「TSMC」が子会社であるJASM株式会社を介して,日本初となる巨大工場を熊本県菊陽町に建設した.また,5兆円に及ぶ投資総額が話題となっている,「国産2ナノ」すなわち次世代半導体の国産化を目指すラピダス(Rapidus株式会社)は,北海道千歳市で新工場建設を進めている.これらの次世代半導体の量産を支えるうえで不可欠なものが,先端材料,製造装置,集積プロセスだ.日本には最先端材料開発や半導体製造装置の分野において,グローバルなシェアを持つ企業がいくつもある.先端ロジック半導体の競争が加速する現代において,その強みを維持し,さらに発展させることが必要だ.
「先端口ジック半導体製造はアメリカに始まり,現在は台湾が大きなシェアを持つ.日本はラピダスで追い上げを図るという構図だ.そして日本には,世界の半導体製造を支える技術を持つ企業が多数ある.とくに先端材料,製造装置,集積プロセスに関わる工学技術は,日本の追い上げにおいて必要不可欠な要素だと言えるだろう」と同シンポジウムの世話人であり,応用物理学会シリコンテクノロジー分科会の幹事長を務める井田次郎(金沢工大)は話す.
同シンポジウムでは,経済産業省の金指 壽氏(経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長),ラピダス,新潟県に工場2つを持つ新光電気工業,さらにASRA・ミライズ テクノロジーズからの招待講演がある.日本の先端ロジック半導体の政策から,日本が誇る自動車産業と関連する車載チップレット技術に至るまでの充実した内容だ.
ウエーハ技術から車載チップレット技術までの充実の招待講演
同シンポジウムは,国内外の半導体開発における最新動向,シリコン関連の半導体,パワーエレクトロニクスおよび自動車に搭載する車載半導体,さらに実装技術の面では,最先端インターポーザや革新的チップレット技術など,幅広い関心から参加できる内容だ.同シンポジウム世話人によるコメントとともに,招待講演の一部を紹介する.
『最先端 Logic 半導体を支えるウエーハ技術』 松川 和人氏 (SUMCO)
生成AIなど,新しいAI技術が普及することで,半導体デバイスにはさらなる高機能,高性能,低消費電力,低コストの実現が求められている.特に先端ロジックデバイスにおいて,これらの要求に応えるための技術開発が活発化している.中でも,微細化と低消費電力化は特に重要だとされる.とくに最先端の2ナノメートル以下のプロセスにおいては,従来のプロセス技術開発に加え,様々な材料開発に依存する割合が多くなる.たとえば,FinFET※1からGAAFET※2構造への移行,低消費電力対応のための裏面電源配線構造(BSPDN)の導入,さらには3D構造やチップレット技術への移行に伴う材料開発が挙げられるという.「日本のシリコンウエーハ技術のグローバルシェアは50%以上.その最先端を切り拓く企業の一つであるSUMCOの松川氏によって解説される最先端ロジックプロセス,半導体の構造変化に伴うウエーハ技術における課題や開発の方向性は,先端材料,製造装置,集積プロセスに関わるすべての産業へ示唆を与えるものになるでしょう」(井田)
『先端ロジックデバイスにおけるプラズマエッチング技術』 伊澤 勝氏 (日立ハイテク)
半導体ロジックデバイスの進化は,部品の微細化や設計・技術の強調最適化(DTCO)による集積化が進んでいる.そして今後は,GAAや「CFET※3」などの立体構造によるさらなる集積化が検討されている.半導体製造に欠かせないプラズマエッチング技術は,これらの複雑な構造に対応するため,極限的な精密加工が求められている.講演では,FinFETにおいて確立されたエッチング技術を改良することで可能となった,量産が見込まれる「GAAFET」の加工技術についても紹介される.
「プラズマエッチング技術は,先端ロジック半導体の実装技術において非常に重要な要素の一つです.日本において最先端を走ってきた日立ハイテクの視点から技術課題とその対策について詳しく解説していただきます」(応用物理学会シリコンテクノロジー分科会副幹事長 中塚理〈名古屋大学大学院 工学研究科 物質科学専攻〉)
『先端ロジックと連携する実装技術 〜有機インターポーザを用いた基板開発〜』 三木 翔太氏 (新光電気工業株式会社)
高度なAIなどを活用した大容量データの高速処理を実現するために,HBM(高帯域幅メモリ)やチップレット(複数の小さなチップをまとめ,1つのチップのように扱う技術)を使用したパッケージ技術が注目されている.これらの技術は,複数のチップを一つの基板上で接続し,高性能な半導体パッケージを構築するために重要だ.新光電気工業株式会社では異種チップやチップレットの集積に対応した大型パッケージ基板「i‐THOP® (integrated‐Thin film High density Organic Package)」の開発が進められてきた.
「新光電気は新潟に工場を持つ,いわゆる後工程において注目されている企業です.特にバックエンドの2.5D技術,すなわちシリコンインターポーザを使う技術は,AMDやNVIDIAなどで一般的に使用されていますが,新光電気の強みは,2.1XTと呼ばれるシリコンよりも安価な材料を用いたチップレット技術の開発に早くから取り組んできたことです」(応用物理学会シリコンテクノロジー分科会副幹事長 宮下桂〈東芝デバイス&ストレージ株式会社〉)
i-THOP®は,配線幅2マイクロメートル,フリップチップパッド間ピッチ40マイクロメートルの有機インターポーザとビルドアップ基板を低融点のSn‐Biはんだで接続した高密度なパッケージ基板.基板の大型化にも対応可能だという.講演では実際に作製されたインターポーザサイズ70×70mmの基板などについて解説される予定だ.
『高度化する AI と協同する車載チップレット技術』 岩城 隆雄氏 (ミライズ テクノロジーズ)
高度なAI技術は,急速に車載応用が進められている.とくに「CNN※4」や「Transformer※5」による車載カメラ画像の物体認識技術,鳥観図認識,軌道計画,さらには操舵を含む自動運転の全工程をAIが行う実証実験も始まっているという.これらの技術的進展に伴い,車載SoC(システム・オン・チップ)への要求も急激な高まりをみせている.
高度な車載SoCは,3‐7nmの微細プロセスで製造され,その開発コストは一品種あたり数百億円に達するという.軽自動車から高級車,商用車まで,用途やグレードごとに必要なAI性能が異なるため,多数のSoCが必要となるが,それらをすべて個別に開発するのは現実的ではないという.この問題の解決策として注目されているのがチップレット技術だ.同講演では,チップレット技術を用いたSoCの技術課題について紹介される予定だ.
「国内の主要な自動車・電装部品・半導体関連企業が連携して設立した自動車用先端SoC技術研究組合『ASRA』は非常に興味深い取り組みです.将来,自動運転の実現に向けて,SoCの重要性は明らかです.さらに国際競争力の高い自動車企業が複数ある日本においては,これらの技術の重要性はますます高まっています」(応用物理学会シリコンテクノロジー分科会副幹事長 中塚理〈名古屋大学大学院 工学研究科 物質科学専攻〉)
シリコンテクノロジー分科会は,2023年秋季学術講演会において,シンポジウム「再起する日本の先端ロジック」,「日本が挑む最先端ロジックへの再挑戦」,2024年春季学術講演会において「実装技術アラカルト」(いずれもエレクトロニクス実装学会共催)を開催し,オンラインを含めた多数の参加者を得た.「再起する日本の先端ロジック半導体 その2」を副題とする今回のシンポジウムでは,今後の半導体研究・開発を担う若手研究者・技術者や学生にも関連分野で将来のキャリアを考える機会を提供したいとする.
「半導体業界内では日本の強みはよく知られていますが,それが実際にどのように日本の産業を革新し得るのか,分野の垣根を超えて幅広く議論したいと思っています.また,学生や若手の研究者にも,これからどのような産業分野が成長しうるか,最新状況を知り,考える機会となることを願っています」と中塚は意気込みを話す.
編集・執筆/森 旭彦
【スケジュール】
シンポジウム『最先端ロジック半導体と連携・協働する材料・プロセス・実装技術の最前線 ~再起する日本の先端ロジック半導体・その2~』
- Opening 13:30 〜 13:35 井田 次郎 (金沢工業大学, シリコンテクノロジー分科会 幹事長)
- 1) AI・コンピューティング・半導体戦略について 13:35 〜 14:05 金指 壽 (経済産業省)
- 2) 先端ロジックデバイスの技術トレンドー過去,現在,未来ー 14:05 〜 14:35 平本 俊郎 (東京大学生産技術研究所)
- 3) 後工程の新しい幕開け:革新的チップレット技術の未来 14:35 〜 15:05 折井 靖光 (Rapidus株式会社)
- 4) 最先端Logic半導体を支えるウエーハ技術 15:25 〜 15:55 松川 和人 (SUMCO)
- 5) 先端ロジックデバイスにおけるプラズマエッチング技術 15:55 〜 16:25 伊澤 勝 (日立ハイテク)
- 6) 先端ロジックと連携する実装技術 ~有機インターポーザを用いた基板開発~ 16:25 〜 16:55 三木 翔太 (新光電気工業株式会社)
- 7) 高度化するAIと協同する車載チップレット技術 16:55 〜 17:25 岩城 隆雄 (ミライズ)
-
Closing
17:25 〜 17:30
宮下 桂
(東芝デバイス&ストレージ株式会社,シリコンテクノロジー分科会・副幹事長)
中塚 理 (名古屋大学,シリコンテクノロジー分科会・副幹事長)
【参加方法】 シンポジウム「最先端ロジック半導体と連携・協働する材料・プロセス・実装技術の最前線 〜再起する日本の先端ロジック半導体・その2〜」
オンライン参加
参加費 無料
応用物理学会大会HP内の「一般公開シンポジウム」のページに,ZoomウェビナーのURLを掲載いたしますので,クリックしてご参加ください.どなたでもご参加いただけます.当シンポジウムについては,当日のみご覧いただけます.後日録画配信はありません.
一般公開シンポジウムページURL:
https://meeting.jsap.or.jp/opensymposium
現地参加
参加費 有料
現地参加いただく場合は,「応用物理学会秋季学術講演会」への参加申込が必要です.
会員 :12,000円
非会員:23,000円
(2024年8月30日までの早期参加申込割引価格)
シンポジウムのみの販売はございません.以下URLよりお申し込みください.
お申し込みいただきますと,参加票が発行できるようになります.当日は,ご自身で参加票を印刷して,直接会場にお越しください.会場付近に参加票ホルダーがございますので,参加票を首から下げて聴講ください.受付はございません.こちらの参加票で,9月16〜20日に開催の第85回応用物理学会秋季学術講演会の全ての講演(有料セミナー除く)にご参加いただけます.
第85回応用物理学会秋季学術講演会参加申込ページURL:
https://meeting.jsap.or.jp/registration
【お問い合わせ】
公益社団法人 応用物理学会
OBTgeneral-matters
2件の注目シンポジウムプレスリリース