公益社団法人 応用物理学会

第3回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞) 受賞者

第3回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会
委員長 黒田和男

光工学業績賞・功績賞は,光工学の研究開発において顕著な業績をあげた研究者技術者を顕彰することを目的とし,故高野榮一氏からのご寄付を基金として2010年に本会に設立された高野榮一光科学基金の事業の1つとして2017年に設立されました.

第3回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)の受賞者の選考は,規程に従い,機関誌『応用物理』などで,2019年10月31日まで業績賞の推薦を募り,また,推薦委員からも業績賞と功績賞の候補者推薦を募りました.推薦委員からの推薦については,9月2日までに業績賞12名,功績賞19名の推薦をいただきました.表彰委員会にて,推薦委員からの推薦者について1次審査を行い,業績賞3名,功績賞3名を本審査に進めることとしました.今年度は残念ながら公募からの推薦はありませんでしたので,昨年から繰り越された候補者も含め,業績賞8名,功績賞8名の候補者について,表彰委員会にて2次審議を行った結果,以下の2名をそれぞれ,第3回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)受賞者に決定しましたので報告いたします.

なお,授与式は2020年3月12日(木)より上智大学四谷キャンパスで開催される第67回応用物理学会春季学術講演会の初日に執り行われます.また,同学術講演会にいて,受賞者による受賞記念講演が行われますので,是非ご参集ください.第67回応用物理学会春季学術講演会のプログラムおよび参加方法についてはホームページ https://meeting.jsap.or.jp をご参照ください.

業績賞受賞者
丸山晃一氏(丸山光学研究所)
業績
回折素子一体型レンズの設計法の確立と回折光学技術普及への貢献

丸山晃一氏は,旭光学工業(後にペンタックスに改名)入社後,光学系の設計および設計ソフトウェアの開発に従事し,多くの優れた業績をあげています.特に,光ディスク用非球面レンズに回折型レンズを重ね合わせる技術を確立し,単レンズの機能を格段に向上し,光ディスク光学系のコスト低減に大きく貢献しました.また,応用物理学会分科会日本光学会の学会活動,日本オプトメカトロニクス協会(JOEM)などでの教育活動を通じて回折屈折ハイブリッド光学系の設計技術を普遍的技術として普及させました.

丸山氏の光ディスクレンズの設計に関する業績を列挙すると,回折素子を用いて色収差を補正した光磁気記録用レンズ,温度変化に対する球面収差を補償したプラスティックレンズ,ディスク保護層の厚さが異なるDVDとCDの2種類のディスクに対し球面収差を補正したDVD/CD互換レンズなどがあげられます.丸山氏のこれらの成果の重要性は,市場のその後のDVD用ピックアップ光学系のほぼ全てがCDの再生(記録)機能も持つDVD/CD互換レンズに置き換えられたことを見ても明らかです.また,光磁気記録光学系レンズについても重要な貢献をしています.光磁気記録用対物レンズにはすでに両面非球面のプラスティックレンズが使われていましたが,色収差補正のためガラスレンズ2枚を追加した3枚組のレンズが必要と考えられていました.丸山氏はこれを回折の波長特性を利用して1枚のレンズで作ることに成功しました.これによって色収差の補正を追加のレンズなしで実現できたのは大きな成果でした.

丸山氏は回折を利用した光記録用レンズの新技術を応用物理学会はじめ光学関係の学会で発表するとともに日本光学会光設計研究グループの光設計研究会や,日本オプトメカトロニクス協会の講演会などで講師を務め,回折屈折ハイブリッドレンズ設計技術の普及に努めています.この技術は,光ディスクの光学系に止まらず,撮影系や眼視系などの光学系にも利用され,波及効果の大きい技術として広く受け入れられています.

丸山氏はまた,応用物理学会分科会日本光学会光設計研究グループの代表を務め,我が国における光学技術の発展に寄与いたしました.以上の業績を認め,丸山晃一氏を光工学業績賞受賞者に決定いたしました.

功績賞受賞者
靏田匡夫氏(元 (株)ニコン 代表取締役副社長)
業績
光工学技術の先駆的研究と長年にわたる啓発活動による顕著な功績

靏田匡夫氏は,『光の鉛筆』をはじめとする優れた著作を通じて我が国における光工学分野の人材教育・育成に多大の貢献をされたことは広く知られています.同氏はこの業績により2003年度第4回応用物理学会業績賞(教育業績)を受賞されています.しかし,同氏の業績は教育に止まるものではありません.同氏は研究者として優れた業績を残しています.

靏田氏は,ホログラフィーや光学伝達関数(OTF)などの現代光学の黎明期に,干渉計測分野において多くの先駆的な研究と技術開発を行いました.中でも,「ホログラフィー干渉計測における干渉縞形成理論とその3次元粗面物体の形状計測への応用」と「シアリング偏光干渉計を用いた結像系のOTF性能評価の研究」は現代光学における干渉計測の新しい方向性を提示し基礎を確立したものと考えられ,その意義は極めて大きいものがあります.また,靏田氏のホログラフィーを用いた波面収差の補正や,白色干渉を用いたレンズの肉厚計測の研究は,現在の補償光学技術や光コヒーレンストモグラフィー(OCT)技術の源流ともいうべき研究であり,その先見性は高い評価に値します.また,靏田氏は応用物理学会分科会日本光学会(当時名称)の元幹事長として学会活動を通じて日本の光学分野,特に光工学の分野の発展に大きな貢献をされてきました.以上の功績を高く評価し,靏田匡夫氏を光工学功績賞受賞者に決定いたしました.

第3回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会

委員長
黒田和男
委員
荒木敬介,梅田倫弘,枝松圭一,小林喬郎,春名正光,本宮佳典,渡辺正信