第2回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞) 受賞者
第2回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会
委員長 黒田和男
光工学業績賞・功績賞は,光工学の研究開発において顕著な業績をあげた研究者技術者を顕彰することを目的とし,故高野榮一氏からのご寄付を基金として2010年に本会に設立された高野榮一光科学基金の事業の1つとして2017年に設立されました.
第2回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)の受賞者の選考は,規程に従い,機関誌『応用物理』などで,2018年10月31日17:00まで業績賞の推薦を募りました.なお,功績賞については今年度より推薦制としたため,公募は行わず,推薦委員から候補者を推薦いただきました.この日まで推薦がありました,業績賞6名,功績賞6名の候補者について,表彰委員会において慎重な審議を行いました.その結果,以下の2名を,それぞれ,第2回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)受賞者に決定しました.
なお,授与式は2019年3月9日(土) より東京工業大学大岡山キャンパスで開催される第66回応用物理学会春季学術講演会の初日に執り行われます.また,同学術講演会において,受賞者による受賞記念講演が行われますので,是非ご参集ください.第66回応用物理学会春季学術講演会のプログラムおよび参加方法についてはホームページ https://meeting.jsap.or.jp をご参照ください.
- 業績賞受賞者
- 八井崇氏(東京大学 准教授)
- 業績
- 光を用いた革新的非接触サブナノ平滑化技術の開発
八井崇氏は,電子デバイスや光デバイスの基板表面の平滑化技術において独創的な業績をあげています.表面の平滑化はデバイスの性能向上に不可欠の技術であるが,従来の化学機械研磨法では平滑化に限度があり,平滑化された基板に機械的欠陥や異物が残留してしまうなどの深刻な問題がありました.受賞者は,従来法に代わる表面平滑化技術として,光による非接触平滑化手法を開発しました.平滑化には,光解離によって活性化される分子を利用しますが,これまで行われていた短波長光を照射した場合,分子は一様に解離され,表面の平滑度は加工前と大きく変化しませんでした.これに対して,受賞者は,分子の吸収端よりも長波長の光を照射することにより,原子オーダでの平滑化を実現することに成功しました.この技術を用い,サブナノ平滑化によるレーザー反射鏡の光破壊閾値の世界記録の達成,極端紫外(EUV)マスク用ガラス基板のサブナノ平滑化,ハードディスク基板の側面および記録面のサブナノ平滑化などに成功しました.加工原理を解明することにより,さらなる応用範囲の拡大が期待されます.
八井崇氏の業績は,基礎的な研究から始まり,基板表面の平滑化という工業的に重要な成果に至ったところに特徴があります.以上の業績により,八井崇氏は光工学業績賞を受賞するのにふさわしい研究者であると認められました.
- 功績賞受賞者
- 一岡芳樹氏(大阪大学 名誉教授)
- 業績
- 光,電子,情報処理技術を融合した画像情報システムの先駆的開発研究
一岡芳樹氏は,長年にわたり光情報処理をはじめとする光工学の広い分野において,我が国の学界と産業界を指導する役割を果たしてきました.
一岡氏は,光学,応用光学を基礎とし,光,電子,情報処理技術を融合したシステム化技術を構築して新しい画像情報システムの先駆的な開発研究を行ってきました.その成果として,我が国初の電子計算機の出力表示装置である自動描画装置の開発,数世代にわたるデジタル画像システムの開発,光コンピュータの基本演算システムの提案・実証,極短パルスレーザーを利用した超高速・時空間情報変換・伝送システムの創出など多くの業績をあげ,光工学の発展,ならびに,今日普及しているデジタルカメラ,画像ディスプレイ,走査型レーザー顕微鏡等の実用化と産業応用に貢献してきました.
学会活動では,応用物理学会理事,評議員,日本光学会幹事長などをはじめ,国内外の学会,国際会議などにおいて要職を務め,英文論文誌OPTICAL REVIEWの創刊に尽力しました.
産業界との連携では,科学技術振興事業団大阪府地域結集型共同研究事業「テラ光情報基盤技術開発」の副研究統括として活躍,関西地域の関連分野の産業活性化に貢献しました.本事業の成果を基に,日本学術振興会産学協力研究委員会「フォトニクス情報システム第179委員会」の設立に携わり,初代委員長を務めました.また,(一社)日本オプトメカトロニクス協会光応用技術研修会の講師を長年務め,光関連産業の若手技術者の育成に関わってきました.
以上を要するに,一岡氏の長年にわたる功績は,光工学の発展,関連産業の創出,人材育成に大きく寄与するもので,光工学功績賞を受賞するのにふさわしい研究者であると認められました.
第2回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会
- 委員長
- 黒田和男
- 委員
- 荒木敬介,梅田倫弘,枝松圭一,小林喬郎,春名正光,渡辺正信