第1回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞) 受賞者

第1回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会
委員長 黒田和男

光工学業績賞・功績賞は,光工学の研究開発において顕著な業績をあげた研究者技術者を顕彰することを目的とし,故高野榮一氏からのご寄付を基金として2010年に本会に設立された高野榮一光科学基金の事業のひとつとして2017年に設立されました.本年はその第1回目に当たります.第1回光工学業績賞・功績賞は,『応用物理』第86巻7,8,9号に掲載された公募に対して2017年10月31日までに推薦があった業績賞7名,功績賞5名の候補者について表彰委員会において慎重な審議を行いました.その結果,合田圭介氏に第1回光工学業績賞を,谷田貝豊彦氏に第1回光工学功績賞を授与することを決定いたしました.

なお,表彰式は2018年2月22日に湯島ガーデンパレスで開催される高野榮一光科学基金設立7周年記念講演会(一般社団法人日本光学会光設計研究グループ 第64回研究会と合同開催)において執り行われます.また,表彰式終了後,受賞者による受賞記念講演が行われますので,是非ご参集ください.高野榮一光科学基金設立7周年記念講演会のプログラムおよび参加方法についてはホームページ http://www.opticsdesign.gr.jp/common/kenkyu-pdf/64th-workshop.pdfをご参照ください.

業績賞受賞者
合田圭介氏(東京大学 教授)
業績
超高速イメージング法の創出及びバイオ応用展開

合田圭介氏は超高速イメージング技術において数々のユニークな業績をあげています.マサチューセッツ工科大学博士課程在籍時はLaser Interferometer Gravitational-Wave Observatory (LIGO)研究開発グループに所属し,重力波検出器の量子強化について研究を行いました.LIGOは2015年に世界で初めて重力波の検出に成功しました.同氏は,LIGOで培った超精密計測技術をイメージング分野に適用することで,2009年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校において,斬新な原理による世界最高速イメージング法を開発しました.2012年には同技術をマイクロ流体分析分野に適用することで高速細胞スクリーニングを実現しました.東京大学に移ってからは,2014年に超高速バーストイメージング法を開発,2016年には超高速ラマンイメージング法を開発し,微細藻類の細胞多様性の研究に適用しました.2017年には新たな原理による世界最高速の共焦点蛍光顕微鏡を開発するなど,次々に重要な成果をあげています.

合田氏は,独創的なイメージング・分光技術を創出することで,基礎科学から産業,医用応用まで広い分野で優れた業績をあげました.また,研究指導者として,多くの優れた人材の育成にも貢献しています.以上の業績により,合田氏は光工学業績賞を授与するのにふさわしい研究者であると認められました.

功績賞受賞者
谷田貝豊彦氏(宇都宮大学 特任教授)
業績
光計測・光情報処理における長年にわたる顕著な功績

谷田貝豊彦氏は長年にわたり光情報処理と光計測の分野において研究と産業応用に貢献をしてきました.光情報処理の分野では,計算機ホログラムによる立体像表示技術とその超高速アルゴリズムの開発,ホログラフィック光メモリー装置の開発および偏光情報を記録できる材料開発からメモリー装置の開発を行いました.光計測に関しては,光学面の精密計測や工学部品等の三次元形状計測などで干渉縞の超精密解析法を駆使して,実用化を目指した計測機器を開発してきました.また,眼科における網膜や角膜の検査には不可欠なOCT装置の開発にも多大な貢献を果たしています.

学会活動においては,応用物理学会理事や日本光学会幹事長を務め,さらに,国際光工学会(SPIE)の理事,会長として国際学会の運営に携わりました.

産業界との関連では,筑波大学産学リエゾン共同研究センターを創設し,地域産業界の連携や大学発ベンチャーの育成に努めました.さらに,宇都宮大学に移ってからは,オプティクス教育研究センターの開設にかかわり,我が国初の産学連携による教育研究機関を発足させました.地域光学産業界との連携活動を強化するため,栃木県光産業技術振興協議会や一般社団法人光技術融合協議会などを発足させました.

このように,谷田貝氏の長年にわたる功績は,光科学技術の発展に関わるものだけではなく,関連する人材の育成に大きく貢献するもので,光工学功績賞にふさわしいと認められました.

第1回光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)表彰委員会

委員長
黒田和男
委員
荒木敬介,梅田倫弘,枝松圭一,小林喬郎,春名正光,渡辺正信