第3回女性研究者研究業績・人材育成賞(小舘香椎子賞) 受賞者

女性研究者研究業績・人材育成賞(小舘香椎子賞)表彰委員会
委員長 上田 修

女性研究者研究業績・人材育成賞は,学会活動を通じ,(研究業績部門)応用物理学分野の研究活動において顕著な研究業績をあげた女性研究者・技術者,または,(人材育成部門)女性研究者・技術者の人材育成に貢献することで科学技術の発展に大いに寄与した研究者・技術者または組織・グループを顕彰することを目的として,小舘香椎子先生(日本女子大学名誉教授,(独)科学技術振興機構男女共同参画主監,応用物理学会フェロー)の日本女子大学理学部退職に際しての感謝の会におけるご祝儀,および小舘香椎子先生からのご寄付を基金として設立されました.第3回女性研究者奨励育成貢献賞の選考は,「応用物理」2月号および応物HPに掲載された公募に対し,2012年4月15日までに推薦のあった候補者について,表彰委員会で慎重な審議を行った結果,高井まどか氏(研究業績部門)および石川和枝氏(人材育成部門)を受賞者と決定しました.

なお,授賞式は2012年秋季学術講演会(愛媛大学)の初日9月11日(火)に行われます.また,高井まどか氏の受賞記念講演は,2013年春季学術講演会(神奈川工科大学)の会期中に行われますので,是非ご参集ください.

研究業績部門受賞者
高井まどか氏(東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 教授)
業績
新規バイオマテリアル創製とバイオセンサー開発に関する先導的研究

高井まどか氏は,早稲田大学において,磁性材料・デバイスの研究で博士(工学)の学位を取得した後,科学技術振興事業団において薄膜太陽電池の高速成膜の研究で業績を挙げました.この間,1998年にNature誌に掲載された高飽和磁束密度を有する軟磁性CoNiFe合金膜の成膜に関する研究は,電解めっき法を用いた画期的な方法によるもので,学界のみならず産業界にも極めて大きなインパクトを与えました.その後,東京大学に移られ,新規なバイオマテリアル創製によるバイオセンサーの開発,マイクロバイオデバイスの研究分野を開拓されました.この分野においては,2008年の Interfinish 2008 (17th World Interfinish Congress & Exposition)で招待講演賞を受賞するなど,高井まどか氏は,今や国際的に注目されている日本を代表する女性研究者の一人です.

高井まどか氏の業績は,研究のみにとどまらず,多くの国際会議,国際シンポジウムにおいて,組織委員,プログラム委員等を務め,また,国内学会でも,応用物理学会をはじめとする多くの学会の評議員,委員を務められています.特に,応用物理学会では,男女共同参画・人材育成委員会の男女共同参画部門の部門長として,女性研究者の育成活動に貢献し,また,代議員(第45期),プラズマエレクトロニクス分科会幹事,会誌編集委員を務めるなど,これまでに多大な貢献をされてきました.また,2011年より日本学術会議22期の連携会員(総合工学)として選出され,国内における応用物理分野でのリーダーシップも期待されています.高井まどか氏は,応用物理学会での活動を中心として,今後さらなる国際的な研究活動,学会活動が期待され,人材育成面を含めたリーダー的女性研究者としてもロールモデルたる優れた研究者であり,本賞の受賞者として誠にふさわしい方です.

人材育成部門受賞者
石川和枝氏(元上智大学)
業績
光学実験を通した理科教育活動,若手女性研究者育成への長年にわたる貢献

石川和枝氏は,東京大学物理教室,上智大学光学研究室,埼玉大学等における学生への物理教育,また,日本光学会,応用物理学会での活動において,長年にわたり小中学校の理科教育や女性研究者の育成,支援活動を実践してこられました.

同氏は,東京大学で小穴純教授のもとで光学実験に従事し,その後,上智大学理工学部においてホログラフィーやレンズ関係の研究を行いました.その内容は,光の基礎的な反射や屈折の実験から,歴史的なレーウェンフックの顕微鏡やガリレオ式望遠鏡,ケプラー式望遠鏡の工作と実験,ホログラフィーの解説と実演,レーザーの実験など多岐にわたっています.

そのようなご自身の経験から,子供たちに,実際の実験を通して物理の面白さを知ってもらうことの重要性を認識し,応用物理学会のリフレッシュ理科教室,国内外の科学博物館,科学技術館などで,光学実験を通した理科教育活動を長年にわたり精力的に行い,少年少女の科学への興味を高めることに貢献されてきました.特に,独特のピンホールカメラの製作と撮影の実験教材は,高く評価されています.また,物理教育でも著名な霜田光一東京大学名誉教授らと共に,継続的に理科教育に尽力されてきていることもよく知られています.

同氏は,また,若手女性研究者の育成・支援に関しても,日本光学会での女性研究者の会(コンテンポラリ・オプティクス),応用物理学会のリフレッシュ理科教室,国内外の科学博物館,大学等でのオプティクスに関する物理教育活動等を通して,大きく貢献されてきました.現在も,応用物理学会人材育成委員会の理科教育活動,女性研究者支援活動に協力されております.

以上のように,石川和枝氏は,子供たちの理科教育,理工系女子大学生や女性研究者の支援の大切さを認識し,女性科学者としての姿勢を自ら示し,子供たちに科学に対する興味を伝え,女性研究者の育成を実践されてきており,本賞の受賞者としてふさわしい方です.

2012年度 女性研究者研究業績・人材育成賞表彰委員会

委員長
上田 修
委員
百瀬寿代(副委員長),奥村次徳,加藤一実,黒岩丈晴,後藤俊夫,近藤高志,島田万里子,早瀬潤子