第1回女性研究者奨励育成貢献賞(小舘香椎子賞) 受賞者
女性研究者奨励育成貢献賞(小舘香椎子賞)表彰委員会
委員長 上田 修
女性研究者奨励育成貢献賞は,学会活動を通じ,(A部門)応用物理学分野の研究活動において著しい成果をあげた女性研究者,技術者,または,(B部門)男女共同参画活動の推進,人材育成に貢献することで科学技術の発展に大いに寄与した研究者,技術者を顕彰することを目的として,小舘香椎子先生(日本女子大学名誉教授・マルチキャリアパス担当学長特別補佐)の日本女子大学理学部退職に際しての感謝の会におけるご祝儀,および小舘香椎子先生からのご寄付を基金として,2009年に設立されました.
第1回女性研究者奨励育成貢献賞の選考は,「応用物理」2月号および応物HPに掲載された公募に対して2010年3月31日までに推薦のあったA部門4件およびB部門4件(委員推薦含む)の候補者について,表彰委員会において慎重な審議を行った結果,美濃島 薫氏(A部門)および後藤俊夫氏(B部門)を第1回女性研究者奨励育成貢献賞(小舘香椎子賞)の受賞者に決定しました.
なお,授賞式は2010年秋季学術講演会(長崎大学)の初日午後に行われます.また,両氏の受賞記念講演は,2011年春季学術講演会(神奈川工科大学)の会期中に行われますので,是非ご参集ください.
- A部門受賞者
- 美濃島 薫氏(産業技術総合研究所 長さ標準研究室 室長)
- 業績
- 超短光パルスによる応用光学計測分野の先駆的研究に関する貢献
美濃島薫氏は,フェムト秒レーザーの超短時間性とスペクトル広帯域性,光速度を介した空間軸の精密さを利用した極限精密光学計測の分野で世界的な業績を上げてきました.
HallとHäschの2005年ノーベル物理学賞受賞に見られるように,超短パルス光コムは時間・周波数における人類が手にしたもっとも高精度の物差しともいうものです.同氏は,光コムのモード間ビートを利用して,距離240mで分解能2μmの長さ計測を実現するなど,キロメートルからピコメートルという広いダイナミックレンジの超精密光学計測分野を開拓されました.これらは,光コムの光周波数計測以外への初の応用であり,時間・空間・周波数を関連づけた同氏の意欲的な新しい分野への挑戦は,広く世界から高く評価されています.
同氏は,2008年度文部科学大臣表彰を受賞されるなど,我が国を代表する女性研究者ですが,同時に,本学会の委員活動はもとより,国内外の学会活動においても活躍されています.特に,レーザー,フォトニクス関連分野で最も評価の高い米国CLEO国際会議では,光計測分野を新設し,さらに,アジア地域から初めてのプログラム委員長(2009年度),実行委員長(2011年度)に任命されるなど運営の中核を担われています.
このように,美濃島氏は,国際的立場から応用物理学の発展に貢献され,研究・教育・学会活動の広い分野で大活躍された小舘香椎子先生の名を冠した業績賞の受賞者としてふさわしい我が国を代表する女性研究者です.
- B部門受賞者
- 後藤俊夫氏(中部大学副学長)
- 業績
- 応用物理学会における男女共同参画活動の先駆的推進
後藤俊夫氏は,名古屋大学工学部教授,副総長,日本学術会議会員,応用物理学会における常務理事,副会長,会長職などの要職を歴任される中,早い時点から男女共同参画ならびに女性研究者支援を念頭において活動されてきました.
特に,応用物理学会副会長在任時(2001年度),数少ない女性研究者が活躍の場を広げてゆくために女性研究者同志の連携の必要性を痛感され,相互交流の場を目指して,応用物理学会内に「女性研究者ネットワーク」を構成し,女性研究者が能力を十分に発揮できる機会を作られました.これが「男女共同参画委員会」に発展し,他の学協会に先駆けて,応用物理学会が最初に男女共同参画を手掛ける第一歩となりました.
さらに,会長就任中に,他の理工系学協会に働きかけ,「男女共同参画学協会連絡会」を構成することを主導されました.この学協会連絡会が2003年度に実施した大規模アンケートは,その結果が男女共同参画白書にも採り入れられるところとなり,文部科学省の「女性研究者支援モデル育成」事業へとつながったことは良く知られています.現在,43の大学・研究機関でモデル事業が進められており,さらに発展形女性研究者支援も開始されています.
このように,後藤俊夫氏は,公官庁のみならず,他の学会もまだ問題としてとらえない前の時点から,女性研究者の能力を引き出すことの重要性を提唱され,その成果が現在の女性研究者支援のさきがけとなったことから,本貢献賞の第一回受賞者としてまさにふさわしい方です.
2010年度 女性研究者奨励育成貢献賞表彰委員会
- 委員長
- 上田 修(金沢工大)
- 委員
- 奥村次徳(首都大),黒岩丈晴(三菱電機),小長井誠(東工大),駒井友紀(日女大,現:国際特許事務所),
高井まどか(東大),波多野睦子(東工大),百瀬寿代(東芝)