特別WEBコラム 新型コロナウィルス禍に学ぶ応用物理 新しい生活様式を快適に過ごすための技術 アブストラクト 藤野 弘行 株式会社NTTドコモ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴って,私たちの生活は一変し,消費行動も大きく変化しました.社会を構成する一人ひとりが,いわゆる「新しい生活様式」(new normal)への転換を求められています.

そうした社会や生活の変化に際して,IT技術を活用したさまざまな取り組みが始まっています.本稿では次のような技術を紹介しています.


・モバイルデータを用いた人の動きの把握
スマートフォンの位置情報を用いて,人々の移動や滞在,あるエリアの人口密度などを把握する技術で,「モバイル空間統計」とも呼ばれます.位置情報はあくまで統計情報として処理され,個人を特定する情報は収集されません.こうした解析によって,コロナ禍の人口密集に対する対策を強化することができます.

図. 2020年7月5日のモバイル空間統計データ(上は地点別,下は新宿駅)
(出典:株式会社NTTドコモ「モバイル空間統計」から抜粋)

・接触確認アプリ
スマートフォン用アプリとして提供されています.アプリをインストールしたスマホ同士が15分以上にわたって1m以内の距離にあったときを「接触」とみなし,それから2週間以内に接触者に陽性が出た場合に通知されます.1mの距離については,Bluetooth通信を使うことでを判定を行っています.なお,接触確認アプリにおいても,個人を特定するような情報は収集されません.


・テレワークでの臨場感の演出
通勤やオフィスでの接触機会を減らすために,自宅等で仕事をするテレワーク(在宅勤務)を導入する企業が増えていますが,メールやビデオ会議があるとはいえ,対面でのコミュニケーション不足による影響も指摘されています.そこで,VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)などのテクノロジーを用いることで,仮想空間内で本当に人に接しているような高臨場感コミュニケーションを体験することができます.また,こうしたXR(仮想空間)技術を実現するグラスの普及には,「輻輳調節矛盾」や「高解像度化」等の課題解決への取り組みが求められます.


コロナ禍において,IT技術を感染予防や新しい生活様式のサポートに活用しようという動きはこれからも広がっていくでしょう.

(要約作成・関 行宏=テクニカル・ライター)
注:本稿は2020年8月下旬時点の情報に基づいています