公益社団法人 応用物理学会

特別WEBコラム 新型コロナウィルス禍に学ぶ応用物理 深紫外光とウイルス不活化への応用 アブストラクト 青柳克信 立命館大学黒瀬範子 国立精神・神経医療研究センター

可視光よりも波長の短い紫外光(紫外線)には,細菌やウイルスを不活化する働きがあることが知られています.

細菌やウイルス内部のDNAまたはRNAは波長が260nm付近の光を吸収する性質があり,強い紫外光を当てるとそのエネルギーによってDNAやRNAが損傷をうけ,菌やウイルスは増殖する能力を失います.

既知のコロナウイルスはインフルエンザウイルスの数分の一のエネルギーで不活性になるとされています.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対しては様々な研究機関で実験が進められていますが,紫外光で不活化できるとの検証結果が少しずつ上がってきている状況です.

細菌やウイルスを「殺す」働きを持つ260nm付近の波長の紫外光は,「UV-C」あるいは「深紫外光」に分類されます.その光源として従来は,ガラス管に封止した水銀蒸気に電圧を与えて発光させる低圧水銀ランプが用いられていました.得られる波長は253.7nmです.ただし,水銀を使用した製品の製造や輸出入を規制する水俣条約が2013年に締結されたことを受けて,水銀を使わない「水銀フリー」発光源への切り替えが進んでいます.

現在,紫外光の光源として広く使われているのが発光ダイオードです.1993年の青色LEDの実用化からさらに20年を経て,2014年に実用化されました.また,キセノン(Xe)やクリプトン(Kr)などの希ガスに電子を当ててエキシマという状態を作り出し,そのエキシマから発せられる光を利用したエキシマランプも広く使われています.

深紫外光は,光硬化性樹脂の処理,光化学合成,材料開発,アレルギー治療,殺菌や消臭,難分解性物質の処理,洗浄や改質(ドライプロセス)など,さまざまな用途に使われています.水浄化システムもそのひとつです.水に照射することで細菌やウイルスのない水を作り出すことができ,上水道の殺菌,プールや温泉での浄化,工業排水の処理などに導入されています.今後は上水道が整備されていない新興国への普及が望まれます.

図 深紫外光のさまざまな応用
(要約作成・関 行宏=テクニカル・ライター)
注:本稿は2020年6月上旬時点の情報に基づいています