特別WEBコラム 新型コロナウィルス禍に学ぶ応用物理 化学発光酵素免疫法を用いた分散型抗原検査システム アブストラクト 堀井和由,狭間俊介,永井圭介 シスメックス株式会社

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の濃厚接触者や症状に疑いのある人を対象に行われているPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は,検査結果が出るまでに数時間を要し,また,検体の採取にあたって防護服(PPE)を着用しなければならないなど手間も掛かります.

今後を考えると,検査を受ける人と検査を担当する医療関係者の双方にとって負担が少なく,かつ,迅速に結果が得られる検査方法や検査体制の整備が必要です.医療検査機関だけに限らず,空港,港湾,高齢者施設,ドライブスルー検査所やウォークスルー検査所などでも検査できれば,より網羅的な対応が可能になります.

こうした分散型の検査には,小型軽量で設置や移設が簡単であること,感度や精度が高く結果が信用できること,操作が簡単で専門の技術者でなくても取り扱えること,データ集計を効率化するために可能であれば外部とのネットワーク接続機能を備えること,などの特徴を備えた新しい検査装置が求められます.

図 試薬(ピンク)が封入されたカートリッジに検体(緑)を注入すると,
磁性ナノ粒子R2(赤)と永久磁石の働きによって順に反応チャンバを送られ,検査が自動で処理される.

本稿で紹介するのがおよそ17cm角の立方体サイズの小型抗原検査装置です.

検出方法としては,ウイルスや細菌などの抗原と,抗原を攻撃する抗体との結合反応を利用した「イムノアッセイ」(Immuno-Assay)の応用のひとつである,化学発光酵素免疫法(CLEIA法)が採用されています.

複数種類の試薬を封入したDVDメディアほどの円盤形のカートリッジに試薬を注入すると,各試薬と反応しながら,磁性粒子と磁石の働きによって反応チャンバを順に移送され,最後に結果が得られます(図).

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2ウイルス)を使っての実際の検証はこれからですが,前立腺がんマーカーの測定では,検体量わずか35µL(マイクロリットル),測定時間20分にて,従来の大型装置と同等の結果が得られることが確認されています.

本装置は,検出対象に応じた円盤状の試薬カートリッジを準備するだけで検査できるなど,臨床検査技師以外の医療従事者でも手軽に扱えるのが特徴です.新型コロナウイルスのほか,ガン,ホルモン異常,アレルギー,妊娠など,さまざまな検査に応用できる可能性があり,実用化が期待されます.

(要約作成・関 行宏=テクニカル・ライター)
注:本稿は2020年7月中旬時点の情報に基づいています