特別WEBコラム 新型コロナウィルス禍に学ぶ応用物理 新型コロナウイルス迅速検査(蛍光LAMP法) アブストラクト 後藤浩朗 キヤノンメディカルシステムズ株式会社

ウイルスや細菌の存在を調べる方法としては,よく知られているPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)のほかにも,さまざまな方法が開発・実用化されています.

日本生まれの技術が「LAMP法」です.検査装置や検査試薬を手掛ける栄研化学によって1999年に発明されました.現在は同社のほかキヤノンメディカルシステムズなどが製品を手掛けています.

LAMPとはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略で,直訳すると「ループの媒介による等温増幅」という意味になります.

PCR法では90°C→60°C→70°Cといった温度の上げ下げを繰り返す必要がありますが,LAMP法は「等温増幅」のとおりおよそ65°Cの一定温度でDNAを大量かつ短時間に複製できるのが特徴です.

LAMP法では,検出したいDNAに対して6か所の領域を決め,それら領域に対応した複製のきっかけとなる4種類のDNAプライマー(短いDNA)を設計します.主要な細菌やウイルスを対象にしたDNAプライマーはメーカーから試薬キットとして販売されています.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2ウイルス)についても対応済みです.

対象となるDNAが増殖したかどうか,つまり細菌またはウイルスが存在しているかどうかは,試薬の白濁を目視で確認する方法と,蛍光標識を用いる方法があり,後者を「蛍光LAMP法」と呼びます(図).

図. 蛍光LAMP法における蛍光強さの変化の様子.DNAの増幅を開始してから5分から10分で蛍光の強度が上がり,検体が陽性であることが示された例.

LAMP法はPCR法と並んでさまざまな用途で使われていますが,2014年に西アフリカでエボラ出血熱の流行が起きたときに,わずか15分で判定結果を出力する検査装置9台が日本からギニア共和国に供与されたことがあります.

2020年4月には長崎でLAMP法が活躍しました.修理のために長崎港に入港したクルーズ船コスタ・アトランチカ号の乗組員623人全員を対象に,わずか4日間で新型コロナウイルスの検査を終えています.

なお,これまで新型コロナウイルスの検査では鼻の奥から検体を採取する必要がありましたが,唾液による検査が2020年6月に厚労省から承認されました.検査の迅速化が図られることで,短時間で結果が分かるLAMP法のメリットがさらに生きてくるでしょう.

(要約作成・関 行宏=テクニカル・ライター)
注:本稿は2020年7月上旬時点の情報に基づいています