第19回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞) 受賞者

光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)表彰委員会
委員長 植田憲一

光・量子エレクトロニクス業績賞は,光・量子エレクトロニクス研究分野において顕著な業績をあげた研究者を顕彰することを目的として,故宅間宏先生(電気通信大学名誉教授)の紫綬褒章(応用物理部門)受賞記念パーティーと定年記念会におけるご祝儀,および宅間宏先生からのご寄付を基金として1999年に設立されました.第19回光・量子エレクトロニクス業績賞の選考は,『応用物理』7,8,9月号に掲載された公募に対して2017年10月31日までの過去3年間に推薦があった10件の候補者について表彰委員会において慎重な審議を行った結果,魚見和久氏に第19回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)を授与することを決定しました.

なお,授賞式は2018年春季学術講演会(早稲田大学)の初日夕刻に行われます.また受賞者による受賞記念講演が学術講演会の会期中に行われますので,是非ご参集ください.

受賞者
魚見和久氏(日本オクラロ株式会社,主管技師長)
業績
量子井戸型半導体レーザーの高性能化の先駆的研究と実用化

魚見和久氏は1980年代初頭の量子井戸型半導体レーザー(MQWレーザー:Multi-Quantum Well)の黎明期から研究開発に関わり,1983年の日立製作所中央研究所入所以来,35年間一貫して,MQWレーザーの高性能化の先駆的研究と,その実用化を推進してきた.

具体的には,1)MQWレーザーでの重要な技術,知見について数々の世界初の実証研究を展開すると同時に,その具体的な達成度を明示化するように多くの世界記録を達成し,MQWレーザーの応用可能性を拡大してきた.特に,半導体レーザーの高速化のために,魚見氏が提案,実証した変調ドーピングの導入が決定的に重要であることは広く認められ,産業界で利用されている.一連の研究成果は,学術的にも高く評価され,高い平均引用数が記録されている.中には,最高引用回数が1710回という傑出した論文も含まれており,企業内研究者でありながら,科学・技術を推進する研究者としての個人的能力も高く評価できる.その成果は広く世界から評価されており,数多くの国際会議から基調講演,招待講演を依頼され,研究成果の公開,普及を通じて,半導体レーザー分野の研究活性化に寄与している.

2)学術論文発表と同時に数多くのMQWレーザーに関する特許出願に見られるように,魚見氏は自らのアイデアに基づく革新的技術の実用化に努力し,日本の光半導体産業力の維持・確保に大きく貢献している.

3)MQWレーザーの先端的技術について数々の世界初の実用化研究を推進した.1990年以降,2.5Gbit/s,10Gbit/s,40Gbit/s,100Gbit/sと,急速に発展した光通信用のMQW型半導体レーザーを,世界に先駆けて実用・事業化する牽引役としての貢献は大きい.光通信用MQW-DFBレーザーの世界初の製品化において,魚見氏の研究が生みだした成果は大きいと評価できる.

以上のように,MQWレーザーに関する魚見和久氏の学術研究と技術革新への貢献,および光半導体産業発展への寄与は極めて顕著であり,光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)にふさわしいと判断した.

2017年度光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)表彰委員会

委員長
植田憲一
委員
大和壮一,加藤義章,五神真,清水富士夫,武田光夫,中沢正隆,野田進,山西正道