第2回(2001年度)応用物理学会業績賞 受賞者
第2回 応用物理学会業績賞(研究業績)
- 件名
- 窒化物半導体青色発光デバイスの先駆的研究
- 受賞者
- 赤﨑 勇
現在世界規模で展開されているGaN系窒化物半導体材料とデバイスの研究・開発は,赤﨑氏とそのグループの研究が全ての出発点である.即ち,低温緩衝層技術の開拓により格段に高品質な結晶の成長に成功(1986年)し,それまで不可能とされていたp型伝導の実現とn型伝導度制御の達成(1989年),さらにpn接合青色発光ダイオードを実現(1989年)したこと等である.
窒化物半導体に関する研究は困難を極め,殆どの研究者が撤退していった.しかし,赤﨑氏は,深い洞察と強い信念に基づき,この未踏の半導体に挑戦し続けた.長年数多くの試行錯誤を繰り返し,成長法としてMOVPE法を,基板としてサファイアを選び,GaNとの大きな格子不整合と結晶構造の違いに起因する重大な諸問題を低温で堆積したAlN緩衝層により克服し,格段に高品質なGaN結晶の成長に成功,この研究における最大の山場を突破した.同氏の最大の功績のひとつであり,これが次のブレークスルーであるGaN系半導体におけるp型伝導の発見やn型伝導度制御の達成につながった.これらはいずれも世界に先駆ける画期的成果であり,これを契機に多くの半導体研究者・研究機関が雪崩を打って参入して来ている.さらに,同氏とそのグループは窒化物半導体における量子効果の検証や結晶のさらなる高品質化技術の開発等,材料科学の研究においても常に先導している.このように先駆的基礎研究から青色発光デバイスの実用化まで我が国がリードし続けてきた世界に誇るべき快挙である.
窒化物半導体はその高い潜在能力と環境調和性の故に産業的展開は広大かつ重厚で,現在先行している光デバイスから次世代電子デバイスにわたる多大な応用分野があり,世界中の研究者がしのぎを削っている.ここでも,同氏の先駆的研究成果が必要不可欠である.
赤﨑氏の窒化物半導体に対する先見と青色発光デバイスの先駆的研究は,内外で高く評価され,Heinrich Welker Gold Medal(1995),紫綬褒章(1997),IEEE Jack A. Morton賞(1998),Laudise賞(結晶成長学国際機構)(1998),朝日賞(2001)など多くの表彰を受けている.また,赤﨑氏は,現在も窒化物半導体の研究で世界をリードし続けており,これらの功績は,応用物理学会業績賞(研究業績)にまことにふさわしい.
赤﨑 勇(あかさき いさむ) 略歴
- 1929年生まれ
- 1952年 京都大学理学部卒,同年神戸工業(株)入社
- 1959年 名古屋大学助手(工学部電子工学科),同講師,同助教授を経て
- 1964年 松下電器産業(株)入社,東京研究所基礎研究室長,同半導体部長(この間1966年AlN,1973年GaNの研究に入る)等を経て
- 1981年 名古屋大学教授(工学部電子工学科)
- 1986年 高品質GaNの成長に成功
- 1989年 p型GaNの実現,n型伝導度制御の達成,GaNのpn接合による青色発光に成功
- 1990年 紫外光の室温誘導放出達成
- 1992年 名古屋大学定年退職,同名誉教授,名城大学教授(理工学部電気電子工学科)
- 1995年 GaInN/GaN量子井戸電流注入室温誘導放出に成功
- 1996年〜 名城大学ハイテク・リサーチ・センター プロジェクトリーダー
- 2001年〜 名古屋大学赤﨑記念研究センター兼務