天然に産出する結晶は,昔から様々な分野で応用されてきた.しかし,大きさ,品質の面でばらつきがあったり,産出量に制限があった.このために,近代工業で大量に使用するには,均質で安価な結晶を育成する必要が生じてきた.
1845年,Scharhaütlが,珪酸ゲルと水を高圧容器内で加熱し,水晶を得たという報告がある.続いて, Verneuil,Tamman,Czochralskiらによって種々の結晶育成技術が開発された.結晶成長技術開発初期の頃には,天然に産出する結晶を人工的に育成することが主目的であったが,次第に天然に存在しない結晶や科学的あるいは工業的に重要な結晶の育成に重点が移ってきた.
われわれが育成した結晶は,人造結晶,人工結晶,合成結晶などとよばれ,天然の結晶と区別される.この人工結晶と天然結晶を区別する目的から結晶評価技術が生まれ,これが現在の結晶評価技術として育ってきたわけである.現在では,これらの結晶育成技術と評価技術を駆使し,高純度で高品質であり,かつ,大型の結晶が得られるようになってきた.
また,薄膜の分野では,原子の 3次元的な配列も制御する技術が確立され始め,いろいろな超格子構造をもつ結晶が作成でき,また制御できる可能性が生まれてきた.
このような科学,工業の基礎を支える材料,結晶育成および評価技術は,物理学,化学,鉱物学,結晶学や冶金学にその基礎を置くものであることを忘れてはならない.
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