ネットワーク型情報化社会における多様なシステムが要請されている.システムのハードウェアの根幹をなすアナログ,ディジタル半導体集積回路の性能および機能向上のため,スケーリング則を基軸に半導体デバイスの微細化,コスト低減のためにSiウェーハの大口径化が継続的に図られてきた.本書の初版の時期(Siウェーハ直径150mm,最小寸法0.8µm)と比して,現在は,Siウェーハの直径は300mm,最小寸法が0.13µmの半導体製造技術を用いたULSIが量産される段階に達している.さらに,0.1µmデバイスの実用化も視野に入りつつある.研究開発のメインターゲットはすでにサブ0.1µmに移行している.
半導体製造技術の飽和が叫ばれつつも,ボトルネックとなるプロセスの加工限界に挑み,デバイス構造,材料,プロセス,装置を含め,多くの個別プロセスおよび統合化プロセスの課題を克服しながら,半導体製造の総合技術は進展してきた.今後,性能・機能 /価格比の大きいシステムオンチップの開発がよりいっそう進展すると期待される.また,本技術はすでに量子効果を含むナノデバイス,光デバイス,マイクロマシン,バイオ,センサなど様々な技術分野へ波及しつつある.半導体製造技術は単に ULSI製造にとどまらず,新しい産業創造の基盤技術にもなりえよう.
本書の初版から多年が経過しており,その間の半導体製造技術および関連周辺技術の進展は著しく,全般的に内容の見直しが行われた.技術進展の推移を見ると,改良・改善により徐々に進歩するもの,あるいはブレークスルー技術となり,飛躍的進歩をもたらすものなどがある.いずれも価値あるものといえるが,旧来の理論では限界と考えられていたプロセスが新装置開発により,打破された例,従来の Siデバイスの性能限界が,整合性に優れた新材料を導入することにより,打破された例,あるいは,異分野の装置あるいは技術と考えていたものが現在の技術背景をもとに見直すと最新鋭の装置に変貌する例などはすべて最後の部類に属するものである.打破のトリガーは旧来の理論や常識となっている従来の知識にとらわれない系統的な研究開発途上でのセレンディピティによっていることがほとんどである.これは他の多くの分野にも共通する事象ではないかといえる.
種々の制約上,本章にすべてを網羅することに限界があるため,章末に掲載の引用文献,また,関連の他章も合わせて参照いただきたい.
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