応用物理は,常に新しい学術分野を開拓し,かつ産業界との連携を通じて社会の根幹を支える基盤を築いてきました.極微の量子世界から無限の宇宙空間に至るまで,物質,光,情報,エネルギーを自在に制御・活用する応用物理の深化は,今後も人々の生活に本質的な豊かさをもたらすと同時に,地球規模のエネルギー・環境問題の解決と宇宙開拓の可能性を矛盾なく両立させる鍵を握っています.
例えば,皆さんが使っているスマホ,実用化が進む車の自動運転と電動化,あらゆる場面に浸透しつつある生成AIの基盤などは,応用物理および関連する先端テクノロジーの結晶と言っても過言ではありません.これらは50年前(1970年代)にはSFに近い夢のような技術でした.それでは,今から30~50年後の未来は,どのような発展を遂げるのでしょうか.
この度,応用物理学会の設立80周年記念事業の一環として,応用物理が拓く将来像を議論し,これにより実現される未来社会を描く『未来ビジョン』プロジェクトに取り組みました.本プロジェクトは,単なる未来予測や受動的な情勢の展望ではありませんし,いわゆる技術ロードマップを作成するものでもありません.本プロジェクトでは,応用物理学や関連する先端テクノロジーを基盤としながら,持続可能で心豊かな「あるべき(望ましい)未来社会」の姿を描き出すことを目指しました.その際,個別技術の進化ではなく,その先にある「人の体験の変化」と絡めて語るビジョンを作成するよう意識しました.
本プロジェクトは,20~30代の産官学の若手メンバー18名が中心となり,数名の理事がメンターとしてサポートする形で進めました.若手メンバーが自らの将来として考えられる30~50年後を想定して,未来の「エンタメ」,「暮らし」,「学校・学び」,「健康・医療・食料」,「エネルギー・環境」,「宇宙」の6カテゴリーで議論を続け,応用物理で社会がどのように変わるか,あるいは変えたいのかを示すことを試みました.次世代へのメッセージとして,若手メンバーが描いた『未来ビジョン』を,ここに紹介させていただきます.
なお,『未来ビジョン』のキャッチフレーズは,若手メンバーからの提案により「想像が創造し,創造が想像する —未来を創る「応用物理」—」としました.これは,人の豊かな想像力が新しいモノを創り,また創ったモノによってさらに新しい発想が生まれ,この循環により「応用物理」が未来社会を切り拓く,という意味を込めています.
応用物理が拓く希望に満ちた未来社会の創造に向けて,ここに提示する『未来ビジョン』が,次世代,次々世代の方々にとって研究開発の方向性を示唆する標(しるべ)の一つとなればと願っています.また,本プロジェクトで作成した未来像を広く社会にアピールすることで,一般の方々に応用物理の重要性が少しでも伝わると共に,中高生の皆さん,およびさらなる未来を支える子供たちに応用物理の魅力が伝わり,将来の進路選択に繋がれば望外の幸せです.
2026年9月1日
未来ビジョン検討WG 委員長 木本恒暢,為近恵美






















