応用物理学会
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2006年 第67回応用物理学会学術講演会(立命館大学)報告
総括一般セッションシンポジウムスクール
第67回応用物理学会学術講演会報告

講演会企画運営委員長 一村 信吾
第67回(2006年秋季)応用物理学会学術講演会が、2006年8月29日(火)から9月1日(金)までの4日間、立命館大学、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県大津市)で開催されました。昨年度の学術講演会(徳島)では前日に台風の直撃に会うという悪条件に見舞われました。しかし本年度は、大会初日から最終日まで、一時的な夕立はあったものの、大会を通して好天に恵まれました。幸い事故も無く、盛況に講演会を終えることができました。

今回は立命館大学の先生を中心に現地実行委員会が組織され、講演会開催に向けて献身的に準備を進めてくださいました。現地実行委員長である高倉秀行先生、現地実行副委員長である名西之先生、同じく副委員長で総務責任者も兼任された森本朗裕先生をはじめ、現地実行委員会の先生方のご尽力に厚く感謝申し上げます。また本講演会では、大学の理解あるご支援とご配慮のもとに、広々とした教室と整った様々な設備を使わせて頂くことができました。現地実行委員会顧問として全体運営にご配慮頂きました川村貞夫副学長、濱川圭弘総長顧問、並びに立命館大学事務局の方々に、この場を借りて御礼申し上げます。

今回の講演会では、一般講演3,378件、27のシンポジウム発表など569件(一般講演の持ち時間15分で換算)を合わせて3,947件の講演申込があり、46の口頭講演会場とポスター会場で活発な討論が行われました。講演申込件数(出題数)は昨年度と比較して200件程度増加しており、参加者の増加が事前から期待されていました。今回の参加登録数の実績は7,246名(暫定数値)と予想を大きく上回るもので、秋季講演会では過去最高の参加者となりました。因みに、これまでの参加登録の最高数は7,111名(1991年;関西大学)です。このため、講演会3日目以降に参加された一部の方々には、第0分冊をお渡しすることができず、参加票と講演会プログラムのセットを特別価格でお渡しする次第となりました。幸い参加者の皆様の暖かいご理解を得て参加登録会場が混乱する事態は回避できましたが、準備部数の見通しが甘くご迷惑をおかけしましたことにつき、この場をお借りして改めてお詫び申し上げます。また講演会企画にあたるものとして、これを機会に事前登録の徹底を改めてお願いしたいと思っています。

図1 に、過去15年間の春季・秋季講演会における出題数と参加登録数の推移を示します。一般に出題数と参加登録数の間に正の相関を読み取ることができますが、ここ数年に比べて参加登録数が大幅に伸びた背景として、次のような要因があったものと考えています。 参加者の大幅な増加に繋がった今回の講演会では、15の大分類分科毎に(または、複数の分科で共同して)27のシンポジウムが企画され、当該分野を概括し、また研究開発の最前線を紹介する多数の招待講演が行われました。このシンポジウムに関係して、今回、地元の高校生を招待し講演を聴講して貰う新しい試みを実施しました。若者の理科離れが喧伝され懸念される昨今、学会講演の聴講を通して研究・開発への夢を広げて貰い、望むらくは将来の応用物理学会への参加者となることを期待しての試みです。今回は会場が広いという恵まれた環境にあったため、高校生の同席が学会に参加された皆様にご迷惑をおかけする事態には至らなかったものと考えています。今後もこのような試みを、会場等の関係で許される限り企画して参りたいと考えておりますので、皆様のご理解をお願い致します。

上記のシンポジウムに加えて、今回の講演会では下記の特別な企画も実施されました。 上記のいずれの特別企画でも多数の方々のご参加を得ることができ、充実した意見・情報交換の場をご提供することができた様に思っています。(1) では、立命館大学側のご協力も得て、シンポジウム終了後に立命館大学SRセンターの見学会も行われました。受け入れ施設の関係で40名に制限された募集人員を遙かに上回る希望が寄せられたため、多くの方々にお断りする次第となりましたが、会員にとって有意義な場をご提供できたものと思います。また(3) では、初めての試みとして、科学技術政策の推進側(文科省、経済省の関係者)と応物学会側(理事会関係者)が集まって、技術ロードマップに関するパネル討論会も実施致しました。パネル討論の趣旨にも関係しますが、経済省の主導するロードマップの作成に応用物理学会としてとして協力する(アカデミアロードマップを作成する)ことが決まっています。講演会企画運営委員会としては、その進捗状況の報告を兼ねた類似の企画を、引き続き計画して参りたいと考えています。会員の皆様の忌憚のないご意見を頂ければ幸いです。

学術講演会に付随するその他の行事として、第28回論文賞の贈呈式が学会初日に行われました。今回の受賞は、JJAP論文賞が6件、JJAP論文奨励賞が5件、解説論文賞が3件です。受賞者は、尾浦憲治朗会長から賞状と記念品が授与され、その業績が讃えられるともに、会期中に論文賞受賞記念講演を行いました。

併せて学会初日には、第20回講演奨励賞の贈呈式も行われました。今回は、2006年春の学術講演会で発表された4,028件の一般講演のうち、申請のあった754件の中から慎重審議を経て選出された41名が、受賞対象に選ばれました。受賞者には尾浦会長から賞状と記念品が授与されるとともに、今回から懇親会の場に招待され、その栄誉をたたえられるとことになりました。今回の申請に対する採択比率は5%レベルと、申請資格者(33歳以下の登壇者)にとって厳しい登竜門ですが、引き続き若手研究者の方々の意欲的な申請を期待したいと思います。

最後に、今回の講演会を、発表分野の観点から解析してみます。現在講演の電子投稿受付時に、重点4分野に関連する場合にマークをお願いしています。その結果では、ナノテクノロジー関連の発表は1,488件、情報通信関連は364件、バイオは116件、環境分野が110件であり、ナノテクノロジー関連の論文は全体の約4割強を占めています。



一方、上記の重点4分野に係わる発表は、多くの分科に分かれて発表されています。図2は、15の大分類分科及び5つの合同セッション毎の発表申込件数を示したものです。当該分野がカバーする研究対象領域における研究展開の流れを受けて、分科毎の発表件数に大きな差が生まれ始めている様子がうかがえます。

考えてみれば、応用物理学会は世の中における研究展開の流れを常に先取りすることで、産業界からアカデミアまでの幅広い層の獲得に成功し、会員数を増やしてきました。しかし1988年に「超伝導分科」が発足して以降、新しい大分類分科は生まれていません。(名称変更を行った分科は、直近でも幾つかあります。)最近、応用物理学会の学術講演会は企業研究者の発表・参加者数が減っているのではという問題点も指摘されていますので、時代の要請を先取りする新しい分科の発足などによる魅力の増加や活性化に関しても、今後検討を進めたいと考えています。

こうした会員サービスの向上や新しい取り組みを継続的に行い、応用物理学会の学術講演会が会員の皆様にとって、より有意義で活力のあるものになるように努めますので、会員の皆様のご理解・ご支援をお願い致します。

最後に、今回の学会誌での講演会報告は全体報告だけですが、各大分類分科、合同セッション、シンポジウムなどの報告は、応用物理学会ホームページに掲載されていますので、ご一読下さい。なお、2007年春の講演会報告からは、学会誌に、全体報告、大分類分科・合同セッションの報告が掲載されることを申し添えます。
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