エリアについて,本年は以下の変革があった.まず,Strategic Areaであった有機エレクトロニクスをCore Areaとし,さらにこれまでになかったPower electronics関連として新しいStrategic Areaとしてまとめ,パワーデバイスと太陽電池に関する議論の場を提供した.さらに比較的関連の深い講演が分布していたArea 1および3でFiNFET and Multi-Gate FETs, Device Reliabilityの二つのジョイントセッションが組まれた.ここには,両エリアから参加者が集まりその利便性から好評を得た.ランプセッションでは,Novel Lithography for more Moore/beyond CMOS and More than Moore”(Organizer: 益論文副委員長(Tokyo Tech.))とSolar cells for electronics from In-vehicle to ubiquitous (Organizer: 論文副委員長(NEC))が行われた.今後のLSIに不可欠な最先端リソグラフィーと車載やユビキタス太陽電池に関するものがゆったりとした時間の中で議論された.
Core Areaにおける主な議論は以下の通りである.Area 1: Advanced Gate Stack / Si Processing & Material Science (由上チェア(SELETE))では,High-k/Metal-Gate,Doping,Epitaxy,Ge-MOSなどのプロセス技術や,これを支える物性評価技術が議論された.High-k/Metal-Gateでは実用化が間近がゆえの苦労を思わせる発表があった.他方では,石英上でのGeの単結晶成長技術やSiを超える電子移動度を実現したGe-MOSFETなど,萌芽技術の急速な発展を感じさせる発表もみられた.Area 2: Characterization and Materials Engineering for Interconnect Integration (松浦チェア(Renesas Tech. Corp.))では,Cu/Low-k配線技術に加えて三次元配線技術(Through Silicon Via,バンプなど),RF/ワイヤレス配線技術に関する論文投稿が増加した.More MooreからMore Than Mooreへと着実に変化している最近の技術動向を反映した傾向と思われる.Area 3: CMOS Devices/Device Physics (若林チェア(Sony Corp.))では,例年以上の招待講演・一般論文・レートニュース論文・聴講者に恵まれ,各招待講演の質が高かった.SON (Silicon On Nothing)構造低消費電力CMOSによるLSI技術から,反転層電子の高移動度化のメカニズム解析や,金属/高誘電率膜ゲートスタック信頼性の解析まで,広範囲な講演が続いた.Area 4: Advanced Memory Technology (仁田山チェア(Toshiba Corp.))では,DRAM,Flash,PRAM,FeRAM,MRAM,ReRAMに関して,興味深い発表と有意義な議論がなされた.その中でも,MONOS FlashのTrapをトンネル電流としきい値シフトでマッピングして評価する手法や,ReRAMのWOx材料を用いた8値動作の報告などが印象深かった.Area 5: Advanced Circuits and Systems (川人チェア(Shizuoka Univ.))では,例年の回路関連のセッションのほか,「低電力回路・デバイス設計のための物理」や「イメージ・センシング・デバイス」を企画した.回路技術のみならず,雑音やばらつきなどデバイス・レベルでの解析の重要性が認識された.Area 6: Compound Semiconductor Circuits, Electron Devices and Device Physics (橋詰チェア(Hokkaido Univ.))では,GaN系トランジスタ,III-V高移動度チャネルデバイス,SiC,ダイヤモンドおよびグラフェンデバイス,酸化物半導体デバイス,そして界面・プロセス評価に関して質の高い発表と活発な議論がなされた.Area 7: Photonic Devices and Device Physics (山田チェア(Tohoku Univ.))では,本年度よりSSDMにおけるシリコンフォトニクスに関する論文をまとめることとした.Si光導波路をベースとする可変光減衰器や波長可変LDなど,優れた光機能デバイスがいくつか報告された.また,三次元フォトニック結晶では初めてのレーザー発振も報告された.量子ドットや受光素子,非線形光学デバイス関連でも優れた発表がいくつかあった.また今回も台湾の大学から,LED関連の発表が多くの件数を占めた.Area 8: Advanced Material Synthesis and Crystal Growth (山田チェア(Tokyo Tech.))では,先端材料及び結晶成長をスコープとし,従来通り窒化物半導体の発表が多く,今回はさらにグラフェンに関する発表が増加し,カーボン系低次元材料に対する興味の高さが伺えた.Area 9: Physics and Applications of Novel Functional Materials and Devices (藤澤チェア(Tokyo Tech.))では,マイクロメカニカル系における光と機械系の結合に関する実験,シリコンSOI素子の量子状態の観測,電子スピンのコヒーレント制御や光の偏光状態との交換を用いた測定手法,電子スピンと核スピンとの相互作用などの有意義な討論がなされた.投稿論文の質が著しく向上し,研究の幅が広がり有意義な会議となった.本年よりCore Areaとなった,Area 10: Organic Materials Science, Device Physics, and Applications (加藤チェア(Niigata Univ.))では,投稿論文数も過去最多となり,この分野の研究がさらに活発化していることが伺われた.有機トランジスタに関する発表内容が多く,デバイス性能の向上や物性評価などに関する種々の報告がなされた.
以下Strategic Areaでの主な議論をまとめると,Area 11: Micro/Nano Electromechanical and Bio-Systems (Devices) (山下チェア(NAIST))では,バイオセンサー,細胞から固体表面までの広い分野での活発な議論がなされた.特に,招待講演でLaurell氏(Lund Univ., Sweden)がマイクロ流路に超音波を加える手法で流路中を流れる微小物体を流路中央や端部に自在に移動させる技術を発表し,この手法で血液の脂質を除去する実用例を報告して注目された.Area 12: Spintronic Materials and Devices (安藤チェア(AIST))では,スピントルクを利用する次世代不揮発性メモリ・論理回路の進展が報告されるとともに,マイクロ波発生や半導体中へのスピン注入などの新しい展開についても多くの報告がされた.Area 13: Applications of Nanotubes and Nanowires (石橋チェア(RIKEN))では,カーボンナノチューブと半導体ナノワイヤの物性,量子デバイス,FET応用など,多くの発表があった.半導体ナノワイヤの作製法は,特にシリコンにおいては,触媒を利用した気相成長法,トップダウン技術を利用した方法の両方が用いられていた.新設のArea 14: Power Electronics (石子チェア(Toyota Central R&D Labs.))では,パワーデバイス,太陽電池用の材料・デバイスについての議論を行った.いずれも,Si系の講演が少ないことが残念であったが,高耐圧ICなどへの展開に向けたSOI基板の「放熱」に対する試み,ガラス基板上のSi薄膜の方位決定メカニズム,フレキシブルCIGS太陽電池,BaSi2太陽電池などに関する講演が注目を集めた.