応用物理学会
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2007年 第54回応用物理学関係連合講演会(青山学院大学)報告
総論 [PDF]一般セッションシンポジウム非晶質・微結晶
分科内総合講演
Cat-CVD法の現状と今後の展開

代表世話人所属14非晶質・微結晶 分科
代表世話人氏名 野々村 修一
非晶質・微結晶分科では,分科内総合講演「Cat-CVD法の現状と今後の展開」を3月29日に招待講演4件,一般講演17件の構成で行った.150名を超す聴講者により,活発な議論が行われた. Cat-CVD法では原料分子の選択により,,特定の結合を切って薄膜を堆積する例が観られるようになった.また,酸化物の研究も始められている.この様な新たな展開を多くの方々に認識していただくために,本分科内総合講演を企画した.

まず,北陸先端大から「Cat-CVD法の現状と今後の展開」と題して招待講演が行われた.本技術の原理の説明後,プラズマCVD法との比較を行い,1)原料ガスの利用効率が4倍以上である,2)立体形状上でも堆積できる,3)高密度ラジカルを得やすく堆積速度が速い,などの特長の説明があった.作製可能材料の増加(a-Si,a-SiNxなどSi系膜,金属酸化膜,テフロンなど有機膜),実用化もしくは実用化に近い応用例(化合物半導体のパッシベーション,太陽電池用薄膜,感光ドラム用薄膜,炭素系有機膜除去)が紹介された.

東工大は,薄膜太陽電池材料として有望であるナノ結晶SiCについて招待講演を行った.結晶粒径の制御方法および粒径と各種膜特性との相関,Ge添加によるバンドギャップ制御の報告があった.また,太陽電池の光吸収層としてのナノ結晶GeCの可能性を示した.

長岡技科大からは,窒化物半導体について招待講演があった.特にGaNのエピタキシャル成長に関して,SiCバッファ層と2段階成長温度により優れたPL発光特性を示すGaNの成長に成功している.また,RuをWメッシュ上にスパッタリングした新規触媒体を用いてGaNの成長に成功したホットな話題の提供もあった.

神奈川工科大から金属酸化物材料について招待講演があった.酸化物作製の問題として酸素と触媒体の反応ならびに金属プリカーサーと触媒体との合金化の2点を指摘した.酸化物を形成するには酸化耐性に優れた触媒体を使用し,酸素分圧を低く抑えることがポイントであることが示された.

引き続き一般講演が行われた.金属酸化物に関してヒーター材料として使用されているカンタルが酸化耐性に優れ有用であるとの指摘があった(神奈川工科大).Ti(i-C3H7)原料,Re触媒体,基板温度400℃の条件下でルチル型TiO2を成長したとの報告があった(岐阜大).

半導体薄膜では,SiC膜をMEMSに適用した例や,NH3の分解効率を高めることで高品質GaN膜を形成可能なことが報告された(長岡技科大他).通常のワイヤ状に換えてメッシュ状のフィラメントを用いることによって,ガスの分解効率が向上し多量のラジカルを容易に生成できることを利用した.また,大量発生させた原子状水素の化学輸送現象を用いることで,微結晶Ge膜が形成可能なことも報告された(岐阜大).このように,Cat-CVD法も長年の研究によって数多くの知見が蓄積されるとともに,プラズマを用いる場合に比べてラジカル濃度が高いという最大の特長が明瞭に認識されるようになり,この利点をより積極的に活用することを目的として製膜方法や装置についても様々な改良が加えられてきている.

絶縁体材料では,HMDSを原料としたSiNx系ガスバリア膜(北陸先端大)およびSiCN膜(九工大)の報告があった.SiNx膜では,酸素の添加により水蒸気透過率が1桁低減するとの興味深い結果も報告された.PEN基板上に堆積したSiCN膜を含む3層構造で,0.03g/m2/day以下の水蒸気バリア性があることが示された(MDF他).また,MOCVD法に比べ低温での作製が可能となるMO原料を用いたCat-CVD法(MO-Cat-CVD)についての提案があった(MDF他).製膜直後での基板表面温度の変化に対して,不活性ガス導入による高い反応室圧力の有効性が示された(東工大).

最後にCat-CVD法で堆積したa-Si:H膜は水素含有量が少ないことに着目した応用例として,フラッシュランプアニールによる堆積後再結晶化に関する3件の報告があった(北陸先端大).結晶性の面内および膜厚方向の不均一性の改善が試みられ,高圧水蒸気処理により少数キャリア寿命が改善されるとの報告がされた.

最後に分科内総合講演を快く引き受けてくださった招待講演者各位ならびに本稿作成に協力していただいた座長・関係者各位にお礼申し上げます.

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