【コニカミノルタオプト(株) 森 伸芳】

     第15回微小光学国際会議(The 15th Microoptics Conference:MOC'09)は,2009年10月25日〜28日の4日間,東京お台場の日本科学未来館(図1)にて開催された.微小光学国際会議は1987年の第1回会議以降昨年のベルギーでの開催を含め今回で15回目を数える.組織委員長は小池康博教授(慶應大)と筆者が務め,プログラム委員長は宮本智之准教授(東工大)と小路元氏(住友電工)が務めた.参加者は新型インフルエンザを杞憂とする246名を迎え,参加国数17カ国であった.全発表件数はTutorial講演4件,基調講演3件,招待講演13件と合わせてトータル172件であった.一般有効投稿論文がポストデッドライン含め152件と過去最高あったこと,海外からの参加者90名は比率で36%と日本開催で過去最高となり,世界同時不況,新型インフルエンザという逆境を跳ね返す成果を上げた.2004年以来の海外開催で世界的に注目が集まってきているものと考える.

図1 会場となった日本科学未来館.


     本会議初日は,台風接近であいにくの雨模様となったが,早朝から多数の参加者が詰め掛けた.小池教授による開会の挨拶につづき,基調講演が行なわれ,小舘香椎子教授(日本女子大)から回折光学の基礎から微小光学分野でのさまざまな応用の紹介があり,M. K. Smit教授(TU. Eindhoven)から光集積に関し,AWGを含む現在の技術から今後の商業化,大規模集積化に向けてのブレークスルーについて方向性が示され,C. J. Chang-Hasnain教授(U. C. Berkeley)から高コントラストのサブ波長回折格子の特異な振る舞いと光エレクトロニクスへの応用についての講演があった.

     13件の招待講演(内4件は特別セッション)について以下紹介する.表1は特別セッション以外の招待講演9件である.これらは,微小光学の幅広い分野にわたるとともに,注目すべき最新発表がわかりやすく紹介されていた.2日目の夜行われたスペシャルセッションでは,組織委員長の小池教授を座長とし,日本科学未来館の毛利衛館長による開会の挨拶の後,”High-Quality Display and Broadband Technology”と題して,竹添秀男教授(東工大),佐藤博士(ソニー),G. D. Khoe博士(TU. Eindhoven), L. R. Dalton博士(Univ. Washington)と4名の方の招待講演が行われ,液晶ディスプレイの現状と今後の予想から,ハイビジョン伝送技術,そしてブロードバンドのためのフォトニクス技術とワイヤレスの融合,有機材料のシリコンデバイスへの応用といった通信とハイビジョンの融合に関する最先端の技術講演がなされ,最後に小池教授が「フェイス・ツー・フェイス」のコミュニケーションを実現する技術としてまとめられた.

M. Kujawinska
(Warsaw Univ. Tech.)
State of the art measurements for micro-optical components
P. Török
(Imperial Coll. London)
Rigorous vectorial high NA imaging theory
S. Yu
(Seoul Nat’l Univ.)
Application of slow-light photonic crystal structures for ultra-high speed all-optical analog-to-digital conversion
L. R. Dalton
(Univ. Washington)
Organic NLO/silicon photonic integration for broadband technology
J. Mohr
(Forschungszentrum Karlsruhe)
Polymer waveguides for use in sensor applications
H. P. Chan
(City Univ. Hong Kong)
Design and fabrication of liquid crystal based electro-optical waveguide devices
K. Wu
(Nat’l Central Univ.)
Optical admittance monitoring for general and sophisticated optical coatings
D. J. Moss
(Univ. Sydney)
Low power CW four-wave mixing in high index doped silica glass micro-ring resonators
L. Zhang
(Bell Labs, Alcatel-Lucent)
InP-Based Photonic Integrated Devices
表1 招待講演題目一覧(基調講演/特別セッション講演を除く).

A. Plenary (3)
B. Display and Lighting (5)
C. Sensing (6)
D. Photonic Crystal and Grating (6)
E. Special Session (4)
F. Waveguide Device (6)
G. Switching (5)

H. Material for Display (4)
J. Poster Session (102+8PDP)
K. Active and Functional Device (6)
L. Interconnection (5)
M. Fiber Technology (7)
Post Deadline Papers (3)
 

表2 セッション名と講演件数.


     3日間で13のセッションが行なわれた.表2にセッション名と発表件数を示す.理論からデバイス,応用システムと微小光学技術の関連する全分野をシングルセッションで聴講,議論できる.専門の異なる研究テーマはとっつきにくいが,初日のマイクロオプティックスレビュー(チュートリアル講演)で得たキーワードやその分野の技術課題などの基礎知識が理解の助けになったと思われる.海外からの参加者の方から,大きな会議のパラレルセッションと異なり,自分の専門と異なる部分も含め技術全体を通して聞け,意見交換をできてよかったとの声をいただいた.図2図3に会議風景を示し,図4にポスター会場の様子を示す.

 
図2 会議風景.                   図3 会議風景. 


 
図4 ポスター会場の様子.              図5  Micro Concertの様子. 


     3日目夕方のAward Ceremonyに続くMicro Concert(図5)は微小光学国際会議の名物で,町田フィルハーモニーバロックによる約30分間の演奏を堪能した.今回の未来CANホールのステージは低く,演奏者の手技を身近で見ることができ,参加者も演奏者も一体の非常にぜいたくな時間を共有できた.微小光学研究グループ実行委員長の中島教授のボーカルとの競演も見られ,迫力ある歌声に聞き入った.

     Micro Concertの余韻を残したまま,カンファレンスパーティは日本科学未来館内のレストラン ラ・テールで行なわれた.図6にその様子を示す.ほぼ満員となったレストランで,台風一過の星空と東京ウォーターフロントの夜景を見ながら,料理と研究者間の楽しいおしゃべりを満喫した.予想を超える参加者でレストランはやや手狭で,ここでも「一体感」を味わうこととなったが,そこ,ここで旧交を温め,情報を交換する輪ができ,狭さを忘れて楽しんでいた.技術に先んじて,「フェイス・ツー・フェイス」に貢献した会議であったと思われる.ここでは東芝の波多腰氏と慶應大の小池教授のピアノ演奏が披露され,楽しいパーティに花を添えた.

     次回のMOCは台湾の新竹での開催が2010年10月31日〜11月3日に予定されている.これについてはhttp://www.comemoc.comで詳細な情報が得られる.今回に引き続き多くの参加者が予想される.

     最後に,会議開催にあたってご援助いただいた助成団体に厚く感謝するとともに,会議に参加していただいた方々,会議運営にご協力いただいた多くの方々に感謝の意を表したい.

図6 カンファレンスパーティの様子.


応用物理(2009) Wb-0013


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