【三菱電機 先端総研 篠田 昌久】

    2009年10月4日から8日にかけて,長崎市のブリックホールにて光メモリ国際シンポジウム2009 (ISOM’09 : International Symposium on Optical Memory’09)が開催された.主催は応用物理学会(主格),日本応用磁気学会,光産業技術振興協会であり,電子情報通信学会,日本化学会,情報処理学会,電気学会,画像電子学会,映像情報メディア学会,精密工学会,レーザー学会,IEEE/PS (Institute of Electrical and Electronic Engineers/Photonic Society),OSA (Optical Society of America),SPIE (International Society for Optical Engineering)が協賛団体に名前を連ねる.

    今回は9カ国から222名の参加者があり,合計で119件の講演発表が行われた.参加者および講演論文の内訳を表1および表2に示す.また,写真1に集合写真を示す.以下,シンポジウムの開催概要を紹介する.

表1 参加者数の内訳.
国名 参加者数
日本 160
韓国 26
台湾 13
米国 8
シンガポール 5
フランス 4
中国 4
その他 2
合計 222

表2 講演数の内訳(筆者の分類による).
講演テーマ 基調講演 特別/招待講演 一般講演
ホログラム関連 1 1 31
システム関連 1 15
近接場関連 0 14
メディア関連 3 11
多層記録関連 2 7
アプリケーション関連 7 0
ナノ/プラズモニック関連 3 3
超解像関連 0 5
部品関連 2 5
そのほか 1 7
合計 119件 1 20 98


写真1 集合記念写真.


    基調講演ではATI社(Advanced Technology Institute Inc.)の松井氏から、爆発的に増大する情報量の将来予測に始まり,データセンターやクラウドコンピューティングといったデータ管理/活用のパラダイムシフトについての紹介があった.さらに,今日世界中でホットな話題となっている低炭素化や電力コスト削減に触れ,テープが主流となっているアーカイブ市場において今後,光メモリーは中規模のアーカイブシステムに適するとの見解が示された.

    毎回,テーマを設定して企画される特別セッションにおいて,今回のISOMではアプリケーションにターゲットをあて,3件の招待講演,およびアプリケーションロードマップが公開された.このロードマップは,2006年のISOMにて1TB,1Gbpsを実現できる光メモリー技術について公開されたのに引き続き,その第2弾として応用面の将来動向にフォーカスして,ISOM委員を中心とした各社からのボランティアの方々によって策定されたものである.ロードマップの調査方向として,三つの分野について個別の検討結果がまとめられ,AV用途およびアーカイバル用途といった既存のストレージ分野以外に,異業種におけるビジネス創出面も検討された.これらのアプリケーションロードマップ策定活動が発端となって,真にビジネスに直結する研究開発が促進されることを大いに期待したい.

    ISOMでは毎回優秀講演の表彰を行っている.The Best Paperにはパナソニックの西原氏らによる100GBに対応したBD-REの3層ディスクの講演が選出され,The Best Academic Paperとして理化学研の田中氏らによる蛍光を用いた記録メカニズムと三次元的な記録性能を示した講演が,さらにThe Best Technical Paperにはパイオニアの山岡氏らによる熱記録で200GBを実現したマスタリング方法の講演が,またThe Best Student Paperには静岡大の辻氏らによる光ファイバーを用いて多層ディスクの再生を共焦点検出方式で行う講演が選出された.The Best Technical Paperを除く3件の表彰講演は,いずれも多層記録方式という共通点があり,今後の研究開発の一つの方向性が示されている.本シンポジウムで発表された研究成果を集めたJJAP(Japanese Journal of Applied Physics)の光メモリ特集号は2010年に発行される.

    会議初日には,2件のチュートリアルセミナーと同時に,ISOM参加者以外の一般の方をも対象とする「ISOM’09県民講座」が開かれ,「光」をキーワードにした講演会が開催された.

    さらに本会議終了の翌日には,ISOM委員が講師となり,長崎県内の工業高等専門学校および工業高校の2校において,光メモリー技術の出張講座を開催した.CD実習キットを用いた講義は好評で,次代の光技術関連技術者育成に貢献すべく,ISOMとして今後も同様の活動を継続したく思う.

    来年のISOM’10はアジア地区での開催にあたり,2010年10月24日〜28日に台湾のリゾート地である花蓮(Hualien)で開催の予定である.

    最後に今回のISOM’09に開催への助成を賜りました,(財)鹿島学術振興財団,(財)村田学術振興財団,(財)日本板硝子材料工学助成会,(財)カシオ科学振興財団には厚くお礼申し上げます.

応用物理(2009) Wb-0011


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