【神戸大学 大西 洋】

    応用物理学会が主催する薄膜・表面物理分科会特別研究会「走査型プローブ顕微鏡」として開催されてきた本国際コロキウムは,これまで20年以上にわたりプローブ顕微鏡のみならず,ナノテクノロジー研究の活発な交流の場として大きな役割を果たしてきた.

    2008年12月11~13日に熱川ハイツ(静岡県東伊豆町)で開催した今回も164名の参加を得て(図1),海外から4件,国内から6件の招待講演を含めて口頭発表38件とポスター発表78件が発表され,国内外の最先端情報を交換する場となった.

図1 第16回SPM国際コロキウム集合写真


    ポスター会場に併設した展示場には,顕微鏡本体ばかりでなく周辺機器やソフトウェアを販売する企業13社が出展し,活発な営業活動を展開した.

    本年プログラムの特徴は,招待講演者を中心として特定テーマに焦点をあてたセッションを設定したことである.テーマごとの口頭発表数を表1に示す.光と組み合わせたナノプローブ技術について早澤紀彦(理化学研究所)・松田一成(京都大学),単一分子のサイエンスとエンジニアリングについてQ.-K. Xue(精華大学)・J.M. van Ruitenbeek(ライデン大学)・吉信淳(東京大学),グラフェンについてJ. A. Stroscio(NIST),有機薄膜トランジスタについて橋詰富博(日立製作所),生体物質と液中AFMについてV. T. Moy(マイアミ大学)・野地博行(大阪大学)・福間剛士(金沢大学)に講演をお願いして各セッションのかなめとなっていただいた.ブリリアントな講演を提供くださった招待講演者に感謝したい.

表1 テーマごとの口頭発表数
テーマ 件数
光とプローブ顕微鏡 5
単一分子と有機薄膜 10
グラフェンとナノカーボン 5
無機材料 5
ナノバイオと液中AFM 7
新しいAFM技術 6


    真空中で単一原子分子を取り扱う研究から,水溶液中のポリマーや生細胞を目的とした研究まで非常に幅の広い研究成果が,実験と理論の両面にわたって披露された.

    初めて英語口頭発表に登壇するために参加した大学院生や博士研究員たちに,本国際コロキウムはよい学び場を提供できている.2泊3日泊り込みで,朝から夜遅くまで好きなだけ議論できる会議スタイルは,学生や博士研究員たちが招待講演者や古参参加者と意見交換し面識を得る場所として有効に活用されている.

    海外からの参加者は「日本におけるプローブ顕微鏡研究の活発さに驚かされた」と異口同音に語っていた.これからも優位性を維持すべきところは維持しつつ,研究分野の垣根を越えて,新しい方向性を貪欲に取り入れていく場として本国際コロキウムの果たすべき役割は大きい.

    本国際コロキウムで発表された研究成果を集めたJJAPの走査型プローブ顕微鏡特集号は2009年8月に発行される.

応用物理(2009) Wb-0006


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