【九州大学 柿本浩一】

    The 5th International Symposium on Advanced Science and Technology of Silicon Materialsが,2008年11月10日から14日までの5日間に,米国ハワイ島コナで開催され,105名の参加者があり盛況のうちに終了した.本国際会議は,日本学術振興会第145委員会「結晶の加工と評価」の主催と,応用物理学会の協賛で開催され,3件のプレナリー,2件のアフターディナートーク,36件の招待講演,そしてポスターと4分間のショートプレゼンテーションが38件の,総数79件の発表で構成されていた.

    本シンポジウムは,1991年からほぼ4年ごとに11月に米国ハワイ州コナで開催されており,今回で5回目の開催となった.シリコン材料の国際会議に関しては,4年ごとに開催されるElectrochemical Societyのシリコンに関する国際会議が本シンポジウムと2年ずれて開催されていた.このために,シリコンの材料に関する国際会議は,この2つの国際会議によって2年ごとに開催されていたが,Electrochemical Societyのシリコンに関する国際会議が現在中止となっているために,実質上,本国際会議がシリコン材料に関する世界的に唯一の国際会議となっている.世界中のシリコン結晶の約7割を生産している日本が,このような国際会議を主催することはシリコン結晶生産国として重要であると考える.

    本シンポジウムへの日本国外からの参加者の比率は約30%と国際色を有し,会議開催の趣旨であるシリコンに関する材料の先端的科学技術に関する研究交流の促進という目的を果たすことができた.国外からは,米国,ドイツ,フランス,イタリア,英国,ベルギー,中国からの参加があったが,ビザ取得の関係で中国からは参加が不可能となった.

    本シンポジウムは,結晶成長と評価,欠陥と不純物,SiC,太陽電池,SOIとひずみSi,新チャネル工学,シリコンフォトニクスなどのセッションで構成されていた.最初に,2件のプレナリーが設定された.MITのProf. Kimeringによる講演が最初にあり,dual coreなどに用いられるパラレル処理に必須なデータ通信に,シリコンフォトニクスが使用される可能性について言及していた.また,コバレントマテリアルの香山氏の代理の鹿島氏が,シリコン結晶の450mm化への動向について紹介した.これらの講演から,シリコンは古い材料ではあるが,微細加工や欠陥制御を定量的にしかも精密に行うことができる唯一の材料であることから,新しい概念を有するデバイス構築の可能性をいまだに十分に秘めた材料であるとの印象を得た.

    また,今回の国際会議ではシリコンに似た材料であるゲルマニウムに注目が集まっていた.このゲルマニウムにおいては,欠陥の制御に関してもシリコンの概念を使用することが可能であり,しかも融点で規格化すれば欠陥形成から分布までを統一的に表現できることは,シリコンに代表される元素半導体が工業的な視点にとどまらず,材料科学的な視点からもいまだに十分研究対象になることを確認できた.

    5日間にわたる会議にもかかわらず,さらにハワイという観光地にもかかわらず,ほとんどの参加者が終日発表と議論に参加していたことは,日本が世界のシリコン産業を引っ張っているという現実と責任という観点から印象的であった.会議後に,多数の海外の研究者から本シンポジウムに関するLetters of Thanks,特に非常にレベルの高い会議であるというコメントが主催者に送られてきていることからも,国内のみならず海外のシリコンの研究開発者からも,本会議を評価していただいていることが強く感じられた.さらに,本会議が学問的に質の高い国際会議であるとの評判から,ハワイのコナ島の政府観光局が,観光局のパンフレットに本会議の様子を写真入りで紹介していることも,本会議の国際的な位置づけを裏付けるものである.

    次回は,4年後の2012年に同じ時期に同じ場所で開催することをアナウンスして閉会した.



応用物理(2009) Wb-0005


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