【Selete 井谷俊郎】

    第21回MNC2008が2008年10月27〜30日にJALリゾートシーホークホテル福岡にて開催された.本会議は,半導体リソグラフィーとナノ加工・ナノ技術に関する国際会議で,米国EIPBN (International Conference on Electron, Ion, and Photon beam technology & Nanofabrication),欧州MNE (International Conference on Micro- and Nano-Engineering)と姉妹会議として位置づけられている.今回の参加者は約420人と例年以上となり,海外,特に韓国,台湾からの参加者が多く見られた.投稿論文数は329件で昨年に引き続き過去最高を更新し,採択数は260件となった.内訳はナノ加工・デバイス関係が47%,MEMS関係が18%,半導体リソグラフィー関係が15%,ナノインプリント関係が15%となっている.以下にセクションごと(シンポジウム含む)のトピックスを記す.

DUV, VUV, EUV Lithography and Metrology:
    32nmノード技術のシンポジウムAとEUVおよびArF液浸リソグラフィー技術に関する発表があった.EUVリソグラフィーでは,露光装置,マスク欠陥検査技術,レジストに関する発表があり各技術に進展が見られた.ArF液浸リソグラフィでは,ダブルパターニングの三つの方法を比較した議論がなされ,さらに重ね合わせやフォーカスなどの計測技術,マスク検査,光近接効果補正などの実用上不可欠な技術も発表され,各技術の発展が伺われた.

Electron- and Ion-Beam Lithography:
    招待講演として,直接描画用マルチビーム露光装置の開発について布瀬暁志氏(東京エレクトロン)にご講演いただいた.また,ナノシリコン弾道電子面放出を用いたEB一括転写の結果,シミュレーションによる化学増幅レジストのラインエッジラフネス(LER)や露光装置のフォギング効果の解析結果などが報告された.また近年,集束イオンビーム関連の発表も定着しつつある.

Resist Materials and Processing:
    ここ2〜3年のEUVリソグラフィー用化学増幅型レジスト開発の進展は著しく,化学増幅型レジストの生みの親である伊藤洋氏(IBMフェロー)のプレナリー講演から始まり,西久保忠臣教授(神奈川大学)に招待講演をいただいた.新規分子レジスト,高吸収レジスト材料の検討,レジストアウトガス問題,自己組織化材料など,材料・プロセスの活発な議論が行われた.さらにポスターセッションでは,脱保護反応の解析など各研究のレベルが例年以上に高く,終了間際まで多くの研究者で賑わった.

Nanodevices:
    招待講演として,財満鎭明教授(名古屋大)にナノシリコンCMOSの方向性と材料プロセス技術に関してご講演いただいた.一般講演では,昨年に引き続きナノワイヤ・ナノチューブデバイス関連が多かったが,評価や応用面での技術深化が見られ,またメモリーデバイスは多様化していることが伺われた.化合物半導体や有機材料デバイスも増加しているが,Beyond CMOSやMore than Mooreの方向付けにより,以前より議論しやすくなっている.

Nanofabrication:
招待講演として,森田清三教授(大阪大)にAFMを用いた原子認識・操作技術に関してご講演いただいた.一般講演では,例年通り多種多様なナノ構造形成手法が提案され,またそれらの手法で作製されたナノ構造の基礎物性からその応用まで多岐にわたる報告がなされた.発表された論文はいずれも応用先をしっかりと見据えたものであり,実用に向け課題が克服されつつある印象を受けた.

Nanomaterials:
    招待講演として,半導体量子ドット内の励起子波動関数の近接場光学顕微鏡(SNOM)による可視化について斎木敏治准教授(慶応大)に,グラフェンにおける電子輸送について神田晶申講師(筑波大)にそれぞれご講演いただいた.一般講演では,量子ドットやカーボンナノチューブをはじめ多彩なナノ材料に関して発表があった.

Nano-Tool:
    山田啓文准教授(京都大)の走査プローブ顕微鏡によるナノ材料評価についての招待講演が興味深かった.一般講演では各種のナノ/マイクロ材料の評価技術,MEMS技術によるナノツール作製など,幅広い領域の成果について活発な議論が行われた.カーボンナノチューブや化合物半導体で構成される振動構造の新たな評価法が多く提案され今後の進展が期待される.

シンポジウムB(Sensor Applications of Micro- process and Nanotechnology):
    招待講演として,石田誠教授(豊橋技科大)から最近の半導体技術やシリコンナノロッドを応用した神経系センサーおよびそのシステムについて,また,山口浩司氏(NTT)から半導体ベースのMEMS, NEMSの先端技術についてご講演いただいた.後半では,計測応用をめざしたバイオツールのナノテクノロジー技術について発表があった.細胞の状態をいかにナノテクノロジーで計測するかというニーズからの歩みと,カーボンナノチューブなどのナノツールをどのように生体計測に展開するかというシーズからの歩みが融合したシンポジウムとなり,大変有意義であった.

Nanoimprint, Nanoprint and Rising Lithography:
    シンポジウムC"Nanoimprint Technology"としてAsian Symposium on Nanoimprint lithography (ASNIL) からの推薦論文7件を含むシンポジウムとなった.招待講演としてE.S.Lee(KIMM),C.K.Sung(Tsing Hua Univ.),藤森進氏(NTT-AT)からそれぞれご講演いただいた.藤森氏らは1970年台に日本電信電話公社(当時)において,ナノインプリントがマスクモールド法という名称で研究されていたことを紹介し聴衆の関心を集めた.

Microsystem Technology and MEMS:
    複雑な三次元構造を作製するために,インプリントやインクジェットを利用する加工技術の進展が報告された.また,これらを利用した光学プリズムの応用やシリコン加工技術を利用したシリコン共振器や光アド・ドロップ回路の試作が発表された.今回は,台湾および韓国からの投稿が4割程度に増大したことが特徴であった.

Bio MEMS, Lab on a Chip:
    従来のMEMS技術に加えて,ソフトマテリアルによるMEMS技術の展開に視野を拡げる観点での幅広い研究成果の報告がなされた.招待講演として,究極の生体MEMSシステムとも呼べる生体分子モーターの分子機構について,難波啓一教授(大阪大)にご講演いただいた.一般講演では,「細胞」をツールとして用いる次世代の技術のための精製,長期培養技術,極微量サンプルインジェクター,生体分子を用いた分子間力計測技術などの,生体分子から細胞までの幅広い流体制御技術,計測技術の最新の進展について報告があった.

    ご案内次回は2009年11月16〜19日に札幌にて開催される(http://imnc.jp/).論文投稿〆切は6月末頃を予定しています.皆様のご参加をお待ちしています.
   本報告をまとまるにあたり,論文副委員長,セクションヘッド各位のご協力を得ましたことに感謝いたします.

応用物理(2009) Wb-0001


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