OYO BUTURI
Vol.88
No.5
2019
5
20195885317
応用物理 第88巻 第5号 (2019)
総合報告

常温衝撃固化現象とセラミックスコーティングへの応用 ── エアロゾルデポジション(AD)法

明渡 純1

エアロゾルデポジション(AD)法やコールドスプレー(CS)法などの純粋な衝突圧力や衝撃力を利用するコーティングプロセスが注目されている.微粒子や超微粒子を数百m/s以上に加速し,ビーム形状にして基板に衝突させ,純粋な機械エネルギーを供給するだけで緻密で密着力の高い膜が形成できる.金属とセラミックスの微粒子は,ほぼ固体状態のまま室温で巨視的に結合していると考えられる.実際,AD法では,室温で数十nm以下の微結晶構造を有する緻密なセラミックス薄膜や厚膜を形成することができ,優れた電気機械特性が得られることが確認され,半導体製造装置の分野,重要なコーティングプロセスとして事業化されている.これは「常温衝撃固化現象(RTIC)」と呼ばれており,原料粒子を溶融状態または半溶融状態にして接合する溶射技術や衝撃焼結とは成膜原理が異なると考えられる.本稿では,RTIC現象を用いたADプロセスの堆積メカニズムと,将来のコーティング技術としての重要性について説明する.

  • 1 国立研究開発法人産業技術総合研究所
応用物理 第88巻 第5号 p.317 (2019) 掲載