OYO BUTURI
Vol.87
No.4
2018
4
20184874250
応用物理 第87巻 第4号 (2018)
今月号の概要

量子技術,オプトエレクトロニクス技術における材料物性,メカニズムから応用まで

『応用物理』編集委員会

今号では,量子応用が期待されるダイヤモンドNV中心,超低消費電力集積回路に向けたトンネルFET,オプトエレクトロニクス技術応用として,有機薄膜太陽電池の発電機構,高効率熱活性化遅延蛍光分子,発光ダイオード(LED)の害虫管理応用,アモルファス窒化炭素薄膜の光有機変形に関する研究を取り上げます.

「総合報告」では,固体中のスピンとしては群を抜く優れたスピンコヒーレンス特性をもち,光によるスピンへのアクセシビリティを有する点などから,量子センサや量子情報素子への応用が期待されているダイヤモンド中のNV中心について,その基本的な物性から最近の研究動向まで広く紹介します.

「最近の展望」では,まず,IoT(Internet of Things)社会で切望される超低電力性能を実現するsteep slope devicesの1つであるトンネルFETを,バンドエンジニアリングに着目した材料物性の観点でベンチマークし,量産化技術が成熟したシリコンにてトンネルFETが実用化される可能性を俯瞰(ふかん)します.続いて,有機薄膜太陽電池における発電機構について,量子化学計算の観点からアプローチした研究を取り上げます.実験では得られない分子レベルでの構造や電子状態を基に明らかにされつつある電荷生成機構について,筆者らの成果を中心に同分野の最近の進展について解説します.

「研究紹介」では,はじめに,有機発光素子(OLED)における熱活性化遅延蛍光(TADF)分子の励起状態ダイナミクスを過渡吸収分光測定により観測した研究を取り上げます.高効率なTADFには電荷共鳴状態が重要な役割を果たしていることを明らかにした最新の研究成果を紹介します.次に,LEDの身近な応用として,昆虫の光応答を利用した害虫防御技術について紹介します.ここでは,光と昆虫の行動の関係について述べ,その応用例を紹介し,最後に害虫防除における最新動向を紹介しながら光の役割について触れます.続いて,光を直接力学的エネルギーに変換する光‐力学的エネルギー変換材料について取り上げます.ここでは,最近,反応性高周波マグネトロンスパッタ法で作製したアモルファス窒化炭素薄膜において見つかった,可視光をダイレクトに力学的エネルギーに変化する光誘起変形について,膜の作製方法から物性,またその応用研究を紹介します.

応用物理 第87巻 第4号 p.250 (2018) 掲載