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第14回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)
受賞者紹介

光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)表彰委員会委員長
植田憲一

光・量子エレクトロニクス業績賞は、光・量子エレクトロニクス研究分野において顕著な業績をあげた研究者を顕彰することを目的として、故宅間宏先生(電気通信大学名誉教授)の紫綬褒章(応用物理部門)受賞記念パーティーと定年記念会におけるご祝儀、および宅間宏先生からのご寄付を基金として1999年に設立されました。第14回光・量子エレクトロニクス業績賞の選考は、「応用物理」6,7,8月号に掲載された公募に対して2012年10月31日までの過去3年間に推薦があった7件の候補者について表彰委員会において慎重な審議を行った結果、小柴正則氏に第14回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)に授与することを決定しました。

なお、授賞式は2013年春季学術講演会(神奈川工科大学)の初日夕刻に行われます。また受賞者による受賞記念講演が学術講演会の会期中に行われますので、是非ご参集ください。

受賞者:
小柴正則氏 (北海道大学 大学院情報科学研究科 教授)
業績:
光ファイバ・集積光デバイスの高精度数値解析技術の開発と最先端光通信への応用

小柴正則氏は、光ファイバ科学、光エレクトロニクス、ナノフォトニクスなどの分野において、独創的で高精度な数値解析技術を開発するとともに、この数値解析技術を新構造光ファイバや集積光デバイス・回路設計にいち早く導入し、新たな光エレクトロニクス分野の開拓に大きく貢献してきた。その業績は大きく三つに分類することができる。

第一は同氏の光・電磁波工学の分野における有限要素法の高度化に関する多大な貢献である。携帯電話に必須の弾性表面波デバイスを皮切りに、マイクロ波・ミリ波回路、光ファイバ、光導波路デバイスなど、多くの波動工学デバイスに有限要素法が普遍的に適用できることを示すとともに、新デバイスの設計指針を提供してきた。

第二は有限要素法におけるスプリアス解の除去法の発見である。従来光・電磁波問題のベクトル波解析では、スプリアス解と呼ばれる非物理解が発生し、これが有限要素法の普及に長い間大きな障害となっていた。同氏は、このスプリアス解を完全に除去できる新しいベクトル要素の開発に成功している。このベクトル要素は、湾曲境界を有する構造物に対する適合性にも優れているため、特に光ファイバやフォトニック結晶ファイバの分野では、内外において幅広く利用されるに至っている。

第三に、最近では、光波の波長オーダーあるいはそれ以下の微細構造物における光波の特異な振る舞いを解明するための解析技術を開発するとともに、フォトニック結晶導波路による波長合分波器の設計理論を初めて構築している。

さらには、既存の光ファイバの限界を打ち破る革新的光ファイバの研究開発を推進し、この分野で先導的な役割を果たしてきている。この9月には、日本電信電話株式会社、株式会社フジクラ、デンマーク工科大学、ならびに同氏が所属する北海道大学の研究チームの共同研究によって、限界とされていた100テラ(100 Tbps)を上回る1ペタ(1 Pbps)の世界最高速光伝送実験に成功し、世界的に大きな注目を集めている。同氏は、この実験で使用された円環状12コア光ファイバの設計を担当し、今回の1ペタ伝送の実現に大きく貢献している。

以上のように、同氏は、電磁界理論の分野で新しい学問分野を開拓したパイオニア的存在であり、有限要素法高度化を中心とする業績は世界的にみても高く評価できる。よって、小柴正則氏を平成24年度応用物理学会、光・量子エレクトロニクス賞に相応しい人物と認めた。

2012年度 光・量子エレクトロニクス業績賞表彰委員会
委員長
植田憲一
委員
大和壮一、加藤義章、菅博文、五神真、小林哲郎、清水富士夫、中沢正隆