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第11回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)受賞者紹介

光・電子集積化技術業績賞(林厳雄賞)表彰委員会委員長
伊藤良一

光・電子集積技術業績賞は,故林厳雄氏が2001年に京都賞を受賞された際の賞金の一部を基金として,光技術と電子技術を融合し集積化することにより高度な機能を得るための新しいデバイス技術やシステム化技術に関わる研究と当該分野の発展に資する目的で設立された賞です.会誌「応用物理」による公募に対して推薦のあった1名の候補者について昨年11月開催の表彰委員会において慎重な審議を行った結果,和田一実氏を第11回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)の受賞者に決定いたしました.

本賞の授賞式はこの春の第61回応用物理学会春季学術講演会の会場(2014年3月17日(月)夕刻、青山学院大学)でおこなわれます.また,受賞を記念して記念講演(シリコンマイクロフォトニクスにおけるGeデバイスの先駆的研究)を予定しています.是非ご参加ください.

受賞者:
和田一実氏(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 教授)
業績:
シリコンマイクロフォトニクスにおけるGeデバイスの先駆的研究

和田一実氏は1973年慶応義塾大学工学部計測工学科を卒業,1975年同大学院修士課程を修了の後,日本電信電話公社に就職,シリコン,Ⅲ-Ⅴ族半導体などの材料・デバイスの研究開発に従事しました.1998年MITマテリアル工学科に就職,上級講師・主任研究員としてシリコンマイクロフォトニクスの研究に従事しました.2004年からは東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の教授としてシリコンマイクロフォトニクスを中心とした通信・エネルギー関連の材料・デバイスの研究を推進しています.

MITにおいては,和田氏はSi基板上のGeの可能性に着目,Kimerling教授のグループでSi上のGeの結晶成長の研究を始め,超高真空CVDによって良質のGeエピタキシャル結晶の成長に成功しました.これは2段階成長と周期的アニールにより可能になったもので,シリコンマイクロフォトニクスにエポックを画する成果であります.引き続き,得られたGe結晶が優れた受光特性をもつことを明らかにしました.このGeの直接成長法はその後多くの研究機関に採用され,500Gb/sを超える理想特性に近いGe受光器も報告されています.

和田氏はさらにシリコンマイクロフォトニクスで重要な光変調器の研究に取り組みました.Si基板上のGeは大きな拡張歪を受けており,バンド構造が著しく変化していることに気付き,直接遷移端近傍ではInPと同程度の大きなフランツ・ケルディッシュ係数を有することを見出しました.この研究は和田氏が日本に帰国後米国の国家プロジェクトに採用され,40GHzの変調器が報告されるなど多くの研究機関で次世代変調器として開発が続けられています.

2004年に日本に帰国,東京大学に就職後,和田氏はチップ上の波長多重方式の研究を開始しました.チップの温度変動により生ずる半導体の屈折率や禁制帯幅の変化を,歪みにより半導体に誘起される複屈折効果を積極的に利用することで補償することができることを見出しました.これは加熱によらないチップ上波長多重方式導入の可能性を開くものであります.

このように,和田氏はシリコンマイクロフォトニクスの黎明期において,Si基板上での高品質のGeの成長法を開拓し,理想的な受光器を開発するとともに低消費電力のGeフランツ・ケルディッシュ型光変調器の可能性を示しました.さらに,和田氏によるSi上Geの高品質結晶成長の開拓と大きな拡張歪の発見はGeにおける光励起レーザ発振(2010年.和田氏が属したMITグループによる)につながりました.和田氏は現在もSi上モノリシック光・電子集積技術の研究開発をFIRSTプログラムほか内外の企業,大学との共同研究で積極的に推進しており,この分野の牽引役としての活躍が期待されます.

2013年度 光・電子集積技術業績賞表彰委員会
委員長
伊藤良一
委員
片山良史,小林功郎,小柳光正,島田潤一,武田光夫,三杉隆彦,米津宏雄,和田修