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第10回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)受賞者紹介

光・電子集積化技術業績賞(林厳雄賞)表彰委員会委員長
伊藤良一

光・電子集積化技術業績賞は,故林厳雄氏が2001年に京都賞を受賞された際の賞金の一部を基金として,光技術と電子技術を融合し集積化することにより高度な機能を得るための新しいデバイス技術やシステム化技術に関わる研究と当該分野の発展に資する目的で設立された賞です.会誌「応用物理」による公募に対して推薦のあった3名の候補者について昨年11月開催の表彰委員会において慎重な審議をおこなった結果,松尾慎治氏を第10回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)の受賞者に決定いたしました.

受賞者:
松尾 慎治 氏 (日本電信電話株式会社 NTTフォトニクス研究所 主幹研究員)
業績:
低消費電力高密度光配線チップ実現に向けたフォトニック結晶デバイス技術の先駆的研究

松尾慎治氏は1986年広島大学第Ⅱ類卒業、1988年同大大学院材料工学専攻修了の後、日本電信電話株式会社に入社され、光エレクトロニクス研究所に所属しました。以来,二次元面型光機能デバイス、波長多重を用いた光通信ネットワーク構成技術、光パケット通信用光機能デバイス、さらに光インターコネクション・デバイス技術の研究開発などに従事し、現在NTTフォトニクス研究所主幹研究員として活躍しています。

ユーザ端末やクラウド環境の急速な普及により、ネットワーク情報処理を担うサーバ/ルータなどのIT機器や情報処理システムの処理能力のさらなる向上が求められています。一方、地球環境保護の観点からIT 機器の低消費電力化の重要性はますます高まっています。松尾慎治氏はIT 機器の中でも最も電力消費の大きいマイクロプロッセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)に着目し、MPU 間/MPU 内のデータ転送に光インターコネクション技術を適用することを目指して、光と電子の融合と高密度集積化を可能とするデバイスの研究開発を精力的に進めてきました。この中で、チップレベルの光インターコネクションの基本的な光源デバイスとして有望な波長サイズ埋込活性層フォトニック結晶(LEAP: Lambda-scale Embedded Active-region Photonic-crystal)レーザを世界に先駆けて実現し、室温動作のしきい値電流として世界最小の7.8 µA、10 Gbit/s 変調動作時におけるエネルギー消費として14 fJ/bitというこれまで報告されているレーザに比べて2桁近く低い消費電力特性を実現しました。この超低消費電力レーザの実現は、5 × 0.3 × 0.5 µm3という今までにない微小なレーザ活性領域の実現や、面内構造をもつ低リーク電流のpn接合をフォトニック結晶構造の中に作り込むという革新的なレーザ構造の実現など、松尾氏の極めて独創的なアイデアと高度なデバイス技術によってはじめて可能になったものです。これに加えて、松尾氏はこのレーザと、導波路、および受光素子とをモノリシックに集積化したフォトニック結晶光集積回路を既に実現し、同一基板内における基本的な光信号伝送機能を実証しました。

これらの成果は、波長サイズ埋込活性層フォトニック結晶レーザが半導体レーザ素子として極めて斬新、かつ優れた動作特性を持つばかりでなく、林厳雄氏がその原型を提唱した光レイヤを用いたチップ内光インターコネクションの基本的な光源デバイスとして有望であることを示しており、松尾氏の研究の独創性と先駆性が表われています。

このようにフォトニック結晶レーザデバイスの研究成果は、情報処理システムの高性能化・低消費電力化・小型化・高密度化を目指して進展しつつある光インターコネクション技術において、今後のチップ間からチップ内の階層に適用できる基本的な光源デバイスを提供するものとして、独創的、先駆的であり、今後の光・電子集積技術および光インターコネクション技術に極めて重要な貢献を果たすものと期待されます。

本賞の授賞式はこの春の第60回応用物理学会春季学術講演会の会場(2013年3月27日(水)夕刻、神奈川工科大学)でおこなわれます.また,受賞を記念して「光電子集積に向けたナノ共振器レーザの研究」に関する記念講演(神奈川工科大学)を予定しています.是非ご参加ください.

2012年度 光・電子集積技術業績賞表彰委員会
委員長
伊藤良一
委員
片山良史,小林功郎,小柳光正,島田潤一,武田光夫,三杉隆彦,米津宏雄,和田修