応用物理学会
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以下の記事は 応用物理 第73巻 第8号 1102ページ に掲載されたものです。
【報告】

応用物理学会講演会における託児室設置

応用物理学会男女共同参画委員会
超電導工研 筑本 知子 東大工 近藤 高志


はじめに

 この春,第51回応用物理学関係連合講演会の会場となった東京工科大学キャンパス(東京都八王子市)でベビーカーを押した子連れ研究者に遭遇された方がいらっしゃるのではないでしょうか.

 今回,本学会では初めての講演会託児室が実現しました.男女共同参画委員会では2001年7月の発足当初から,託児室設置を1つの課題と捉えて検討を行ってきました.その背景には,2001年秋の全会員対象のアンケート調査で,学会に望むことの1つとして託児室設置が寄せられていたこと,また,2002年10月に発足した男女共同参画学協会連絡会の参加学会23学協会中,すでに9学会で講演会託児室が実施されており,学会託児室に対する関心が高まっていたことがあります.その後,2002年12月〜2003年1月に全会員を対象におこなった託児ニーズ調査1)で,実際に預けたいとする子どもの数が22家族32名,「機会があれば」を合わせると83家族119名と,少なからぬニーズがあることが明らかとなりました.2003年4月より設置に向けて本格的な準備を開始し,今春の講演会において,初めて託児室を試行的に設置することとなりました.


設置に向けての準備

 講演会期間中の臨時託児室ということで,具体的には講演会会場内に託児場所を設け,ベビーシッター会社などから資格をもったプロの保育者を派遣してもらい託児を行います.講演会が全国各地で開催されることを考慮に入れ,全国展開しているシッター会社数社について4月〜6月の2ヶ月間かけて業務内容についてヒアリングを行い,安全確保を第一としながら慎重に選定を行いました.選定後も,会員数約24,000人の応用物理学会という大規模学会での設置ということで,事務局・開催校の負担を考慮に入れて,シッター会社との協議を重ね,受付方法,キャンセル対応,会場設営など,最適な方法を考えました.その結果,利用案内および受付はすべて応用物理学会のホームページ上で行うことにいたしました2).また,シッター会社には,特に安全面を配慮して,利用する子どもが1人の場合も必ず保育者2人以上の体制で対応していただくようお願いしました.万が一の事故に備え,シッター会社の加入する賠償保険の他,学会としても障害保険に加入しました.


東京工科大学託児室の様子と今後の課題


講演会託児室の様子
 託児場所は講義室の机・いすを片づけ,下にマットを敷いた簡易なものでしたが,飾りつけなどで託児室らしい雰囲気一杯の中,ベテランシッターによるきめ細かな対応で,子どもたちはゆったりと安心して過ごせたようです(右図).大会の1日目,2日目は好天に恵まれたこともあり,子どもの様子をみながら,広い大学構内にお散歩にでかけたりもしました.また,講演会3日目に東邦大学の吉祥瑞枝さんたちのボランティアによるマリー・キュリーの紙芝居が上演され,子どもたちも大喜びでした.

 今回は初めての試みということで,必ずしも宣伝が行き届いていたわけではないと思いますが,5家族5名の申込みがあり(実際利用したのは3家族3名),のべ33.5時間・人の利用がありました.利用者からは「今までは学会のたびに近隣の託児所を探さねばならず大変だった」,「講演会場内に託児室が併設されたことで学会に集中することができ,また子どもも楽しく過ごすことができた」,「今後も継続して設置してほしい」との声が寄せられており,今後も託児室設置を継続していく必要性を感じました.その一方で,金銭的負担が大きいとの意見も一部の利用者から寄せられ,そのため,託児室利用および講演会参加を断念したとのことでした.今後,利用が広がれば,料金体系3)についても検討する必要があると思われます.

 最後になりますが,今回の初の託児室設置に際して,東京工科大の事務の方や先生方,応用物理学会理事,事務局,男女共同参画委員等の多くの方々に多大なるご助力,ご支援をいただきました.この場をお借りして感謝の意を表します.また,今後とも学会員の皆様の,ご理解,ご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます.



1) 松尾由賀利他:応用物理 72(5), 639 (2003).
2) http://www.jsap.or.jp/activities/gender/takuji/index.html
3) 今回の託児室の利用者負担金額は600円/時間・人(ただし1歳以下は800円/時間・人)
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