次に,演壇に立たれた富士通研究所の持田侑宏氏(右図)は,海外の元国立研究所の諮問委員などを歴任されたことで培われた「Technology Value Chain」,すなわち,人,技術がつながることで高い価値が発生する,という考えに基づいて講演されました.例えば,富士通研究所では海外研究所も含めるとその10%が外国人で占められていることや,ミュンヘン工科大学との共同研究が,ドイツ政府とのマッチングファンドで行われていることを説明されました.
衝撃的だったのは,国内企業から大学への委託研究は,件数では国内:国外が3:1であるのに対し,研究費では1:6と逆転しており,結果的に日本の企業から海外の大学に,国内の2倍もの資金が投入され,より太い「Technology Value Chain」が実現されているという事実です.この理由として氏は,委託先の海外の大学や研究所でとられている施策をあげられました.マッチングファンドの仕組みや,最低研究費のみが保証され,成果によって上積みされる仕組み,そして日本では考えにくいことですが,大学学長のミッションとして大学の知識・技術のマーケティングがあり,企業に海外大学から常に熱心な売り込みがある,といったいずれも経験に基づいた貴重な具体例でした.
中でも,「構成員が男性と女性で1:1,すなわち,女性を活用する土壌がある企業でROA(Return on Asset:総資産利益率)が最大になる」というデータや,「既存のシステムに満足している人(上長)は女性を登用するという決断をしない」という意見(いずれも渡辺氏)は,会場の関心を集めていました.また,「英国でサッチャー氏が支持されたのは,社会の方向を決め,社会の皆が理解できる言葉を使って説得したから(Sandhu氏)」というくだりは,男女問わずリーダーに必要な資質だと思います.