応用物理学会
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以下の記事は 応用物理 第73巻 第6号 824-825ページ に掲載されたものです。
【報告】
男女共同参画委員会主催

科学技術立国で活きる人材
ー産・官・学における未来型人材育成ー

男女共同参画委員会春のシンポジウムWG代表
宇都宮大 阿山 みよし

 3月30日(火)13:30から講義棟AのZR会場にて男女共同参画委員会主催のシンポジウムが開催された.200人収容の大講義室がいっぱいになる盛況の中,小田俊理氏(東工大)の総合司会により進められた.榊裕之会長(東大)のOpening Remarksに続き,前委員長の小舘香椎子氏(日本女子大)がこれまでの活動概況と学協会連絡会活動を紹介した.続いて新委員長の近藤高志氏(東大)が秋のIM,託児室,学協会アンケーなどH15年度の主な活動とH16年度の活動計画を紹介した.

 基調講演は前文部科学大臣の遠山敦子氏による「科学技術立国と人材育成」で,研究分野における多様な人材登用の推進(特に女性を3割程度),高度な研究と社会を繋ぐ科学コミュニケーターの必要性,机上の学問から実社会での経験重視へ,スーパーサイエンススクールを初めとする伸びる子を伸ばす習熟度別の指導への大改革など,在任中の施策や提言についてその意図したポイントを簡潔に述べられた.最後は,産学連携を推進しつつも大学の本来の使命は基礎研究であることを忘れないで欲しいという結びであった.

 特別講演は,持田侑宏氏(富士通研究所)による「産官学連携における人材育成」,金原粲氏(金沢工大)による「大学における人材育成戦略」,元村有希子氏(毎日新聞)による「理系白書からみた現状と今後の課題」の3件であった.

 持田氏は,日本の大学は国内企業だけでなく海外の大学・国研・企業とも交流・連携を打ち立てること,教育−基礎研究−応用研究−開発・製造−社会・ユーザーというテクノロジー・バリューチェーンを効果的につなげる努力が必要であると述べた.

 金原氏は,最近の大学生の特徴として,数物的学力不足,日本語能力不足,Why -Because的思考の欠如があるが,How的思考の習熟,プレゼンテーション技術の高さをあげ,一方でこれまでの「数物主義」教育も反省し,文理融合型の視点からの人材育成が必要であると述べた.金沢工大で実施されている工学設計という科目を例にあげて実践型教育の成果を紹介した.

 元村氏は,理系の研究開発分野における女性比率は絶対値が少ないだけでなく,管理者指導者層にいくほど激減するピラミッド型であり,その根は中学校から始まっていることを各種の調査結果を基に示した.文理別教育の見直しと大学受験改革,寄り道や回り道や出る杭を支援する風土の醸成,そして女性を活用するためにはある程度のポジティブ・アクション導入が必要であると述べた.

 休憩をはさんでシンポジウムのテーマについてのパネルディスカッションが行われた.パネリストは,アダルシュ・サンデュー氏(東工大),白石正氏(東海大),渡辺美代子氏(東芝),美濃島薫氏(産総研)で,司会は川原田洋氏(早大)と筆者であった.

 議論の焦点を絞るため,あらかじめパネリストに以下の課題が提出されていた.(1) 産業界や元国研などから大学へ,大学から産業界や元国研などへ望むこと,(2) ジェネラリスト,スペシャリスト養成のための人材育成戦略,(3) 指導的立場の女性比率向上策,(4) 教育で普遍的に必要なこと,の4点である.これらの課題に沿って議論が進められた.特に (2) については,渡辺氏は可能性のある女性への啓発や新しい人材評価方法,美濃島氏は男女ともに自然体で活躍できる人材育成,白石氏はリーダーシップトレーニングの必要性についての意見を述べた.サンデュー氏は,英国のサッチャー元首相の例をあげ,彼女には社会の方向を決め多くの人が理解できる言葉で説得する能力があった,男女を問わずリーダーにはそのような資質が要求されると述べた.

 最後は福島理恵子氏(東芝)が,Closing Remarksで締めくくった.

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