OYO BUTURI
Vol.86
No.12
2017
12
20171286121039
応用物理 第86巻 第12号 (2017)
今月号の概要

点欠陥/細胞レオロジー/超分子ポリマー/自己修復型金属配線/大環状芳香族分子/CT励起子

『応用物理』編集委員会

今号では,半導体点欠陥に始まり,1細胞レオロジー,超分子ポリマー,自己修復型金属配線,大環状芳香族分子,電子‐正孔対(励起子)と,材料の基本的な性質をさまざまな観点から捉えたバラエティに富んだ内容になっています.

「総合報告」では,半導体の固有欠陥である点欠陥の原子構造と電荷状態の基礎に始まり,形成エネルギーの実験結果や理論予測からエントロピーに関する現状まで丁寧にわかりやすく解説され,ゲルマニウムとワイドギャップ半導体における研究についても簡単に述べられています.

「研究紹介」では,5件の記事を紹介します.原子間力顕微鏡(AFM)を用いた細胞の粘弾性(レオロジー)の定量計測法と1細胞力学診断技術の基礎となる細胞レオロジーの個性(集団分布)とエルゴード性についての紹介,次いで光異性化分子を導入した鎖状分子集合体「超分子ポリマー」による,光照射によって螺旋(らせん)構造がほどける機能をもつ新しい人工ナノ繊維を紹介します.また,断線部に生じた電界による誘電泳動力により金属ナノ粒子が断線部を架橋するという自己修復型金属配線とその応用の紹介,全固体リチウム電池の新しい材料としての大環状芳香族分子のナノ細孔結晶,およびその高精度な構造解析により解き明かした高容量化・充放電高速化を実現するために必要な構造基本要素の紹介が続き,最後は,有機半導体において動作原理の中核をなす物理現象である励起子についての研究で,ドナー分子からアクセプタ分子への電荷移動によるCT型励起子の形成とその特異な物性の一例としての長距離相互作用を紹介します.

「基礎講座」では,半導体デバイスシミュレーション(基礎編)としてどのようなモデルに基づき何を計算しているかについて述べます.「やわらかい記事」では,植物の栄養や進化について,また蛍光計測による海苔(のり)の生育診断など,身近なものを科学的な観点から捉えた研究を取り上げています.

応用物理 第86巻 第12号 p.1039 (2017) 掲載