OYO BUTURI
Vol.86
No.6
2017
6
20176866488
応用物理 第86巻 第6号 (2017)
研究紹介

2次元材料の電子状態解析 ── シリセン研究における実験と計算の協奏

高村(山田) 由起子1尾崎 泰助2

グラフェンのケイ素版といえるケイ素の蜂の巣格子であるシリセンは,1994年の論文1) でその存在が理論的に予言されていたものの,実験的な合成報告があったのは最近である.黒鉛からの機械的剥離により得られるグラフェンと異なり,炭素と同じ14族元素の蜂の巣格子であるシリセンやゲルマネン,スタネンなどは母材となる層状物質が存在しないため,実験的な合成報告は単結晶基板上へのエピタキシャル成長によるものがほとんどであり,結晶構造と電子状態への基板の影響が無視できない.加えて,同定の決め手となる評価方法が存在せず,複数の相補的な分析法を併用する必要があり,なおかつ,得られた実験結果,特に電子状態の解釈を行うには,第一原理電子状態計算が不可欠であるなど,1つの研究室ではなかなか歯が立たない.本稿では,シリセンのような未知の2次元材料の研究を行うにあたって,実験と計算の協奏(競争?)がいかに重要であるかを,我々のこれまでの共同研究の成果を交えて論じてみたい.

  • 1 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系
  • 2 東京大学 物性研究所
応用物理 第86巻 第6号 p.488 (2017) 掲載