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第13回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)
受賞者紹介

光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)表彰委員会委員長
加藤義章

光・量子エレクトロニクス業績賞は、光・量子エレクトロニクス研究分野において顕著な業績をあげた研究者を顕彰することを目的として、故宅間宏先生(電気通信大学名誉教授)の紫綬褒章(応用物理部門)受賞記念パーティーと定年記念会におけるご祝儀、および宅間宏先生からのご寄付を基金として1999年に設立されました。第13回光・量子エレクトロニクス業績賞の選考は、「応用物理」6,7,8月号に掲載された公募に対して2011年10月31日までの過去3年間に推薦があった8件の候補者について表彰委員会において慎重な審議を行った結果、以下の2件を第13回光・量子エレクトロニクス業績賞(宅間宏賞)に決定しました。

なお、授賞式は2012年春季学術講演会(早稲田大学)の初日夕刻に行われます。また受賞者による受賞記念講演が学術講演会の会期中に行われますので、是非ご参集ください。

受賞者:
武田光夫氏 (電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授)
業績:
フーリエ変換縞解析法の発明と応用の開拓

武田光夫氏は1980年代の初頭に米国光学会誌に空間キャリア周波数を利用する「フーリエ変換法」と呼ばれる干渉縞解析法を提案し,時間キャリア周波数を利用していたそれまでのテロダイン干渉計測法や位相シフト法では不可能であった単一の瞬時干渉縞画像から位相と振幅を同時に求めることに成功した(JOSA 1982).

武田氏はフーリエ変換法を単なる干渉計測技術ではなく「規則的な周期構造(キャリア周波数)が何らかの物理情報により変調されている時空間縞信号から位相と振幅の情報を抽出するための強力で高い汎用性をもつ信号処理技術」と位置づけることにより,結晶の格子歪の精密計測などのより広い分野への応用展開を目指した.四半世紀にわたる武田氏の努力と、世界の多くの研究者による改良・発展や新応用分野の開拓を経て,フーリエ変換法は今や全世界で広く用いられるようになり,単一縞画像をもちいた高速現象の精密位相測定技術の国際的デファクトスタンダード的な地位を確立している.

武田氏の1982年の論文(JOSA 1982)はWeb of Knowledgeによる引用件数が1580件を超え,翌年の関連論文(Appl. Opt. 1983)とあわせると引用数は2000件を超えている.また,米国光学会誌(JOSA)が発刊90周年を記念して発表した同誌の過去90年の全掲載論文の引用件数で武田氏の1982年の論文は歴代5位タイにランクされており,同氏の研究のインパクトの大きさを示している.

武田氏の発明によるフーリエ変換縞解析法の応用は、科学計測,産業計測,生体医用計測を含む極めて広範な分野に広がっており、光・量子エレクトロニクス賞にふさわしい業績である。

受賞者:
浜田恵美子氏 (名古屋工業大学 産学官連携センター 教授)
業績:
1回記録型光ディスク(CD-Rなど)の先駆的研究開発とその事業展開

浜田恵美子氏は「CD-Rの母」と世界的に認められる大きな存在である。浜田氏は、CD、CD-ROMと互換性をもつ記録型光ディスク媒体の必要性に着目し、世界に先駆けて1回記録型光ディスクCD-Rの開発を太陽誘電(株)において進めた。波長780nmにおいて高屈折率、低吸収係数を有する色素により記録層に干渉構造を形成するという画期的発想で、CDと完全互換性を有するCD-Rの開発に1988年に成功した。この結果、CD-Rは低価格の大容量記録媒体として極めて短期間に普及し、世界における年間売り上げ枚数は1998年の6億枚を経て、2005年には140億枚を突破した。その後はDVD-Rが次第に主流になるが、CD-Rを超えるには至っていない。また近年は、BD-Rがゆるやかであるが市場で成長している。

この間、コンピュータやネットワーク環境の進歩発展に伴い、大容量記録媒体や高速データ転送に対応するX(X=2, 4, 8, 16, 32, 48)倍速記録再生CD-R、さらにDVD-Rなどの開発が次々に進められ、一方生産基地が海外に移動するなど激しい競争下で事業が展開されてきた。太陽誘電(株)は高速記録再生の媒体やDVD-Rの開発に成功し、日本国内での生産を続けているが、浜田氏は高機能媒体の開発を進めるとともに、基本特許を含め多数の特許を出願し企業を防衛するなど、事業展開にも重要な貢献をされた。近年は大学において、新事業における標準化戦略について指導を行うなど、後進の育成に力を注いでいる。

浜田恵美子氏による1回記録型光ディスクの先駆的研究開発とその事業展開は、光ディスク産業の市場拡大に多大な貢献をされたものであり、光・量子エレクトロニクス賞にふさわしい業績である。

2011年度 光・量子エレクトロニクス業績賞表彰委員会
委員長
加藤義章
委員
植田憲一、大木裕史、五神真、小林哲郎、清水富士夫、菅博文、中沢正隆