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第8回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)受賞者紹介

光・電子集積化技術業績賞(林厳雄賞)表彰委員会委員長 伊藤良一
光・電子集積化技術業績賞は,故林厳雄氏が2001年に京都賞を受賞された際の賞金の一部を基金として,光技術と電子技術を融合し集積化することにより高度な機能を得るための新しいデバイス技術やシステム化技術に関わる研究と当該分野の発展に資する目的で設立された賞です.会誌「応用物理」による公募に対して推薦のあった4名の候補者について昨年11月開催の表彰委員会において慎重な審議をおこなった結果,中川茂氏を第8回光・電子集積技術業績賞(林厳雄賞)の受賞者に決定いたしました.

中川茂氏は1991年に東北大学大学院工学研究科修士課程修了後,ヒューレットパッカード日本研究所勤務をへて,1998年カリフォルニア大学サンタバーバラ校PhDコースに入学し,2001年にInP基板上長波長面発光レーザーの研究でPhD学位を取得しました.その後,2005年日本アイ・ビー・エム株式会社東京研究所に入社,主任研究員,専任研究員を経て,2009年より光インターコネクト・テクノロジー担当マネージャーに就任,現在に至っています.

情報化社会を支える基礎として,コンピュータ・システムの高性能化が絶え間なく進んでいます.消費電力を抑えた状態でこの高性能化を達成することが要求され,広帯域のインターコネクトによりCPUやメモリ・スイッチ等の間を結んだエネルギー効率の良いマルチコア・システムが採用されています.中川氏は,このインターコネクトの候補として光インターコネクトに着目し,光デバイスからシステムまで幅広く研究開発を推進し,高速光インターコネクトの低消費電力化・高密度化を世界に先駆けて提唱し実証してきました.

デバイスレベルでは,1998年から2001年にわたるカリフォルニア大学サンタバーバラ校PhDコースにおいて,Larry Coldren教授の指導の元,長波長帯面発光レーザーの研究に取り組み,InP/GaAlAsSb系半導体と新しいダブル・イントラキャビティ構造の採用により,1.55μm帯で当時世界最高の高温動作・高光出力を達成し,長波長帯面発光レーザーの高性能化を実証しました.システムの観点からは,中川氏は2007年に,上述のLarry Coldren教授の協力のもとで,長波長・高効率の990nm面発光レーザー(VCSEL)を用いた光インターコネクトシステムにより,15Gbps光信号に対して1Gbpsあたり0.9mWというそれまでにない低消費電力の光送信機を世界に先駆けて実現しました.さらに,1060nm帯においても低バイアス電流による高速光伝送を実現しました.これらの結果は,高速の光インターコネクトによる低消費電力化の可能性を明確に示したもので,この分野の進展を先導した重要な貢献であります.

さらに,中川氏は,光インターコネクトシステムの高密度化への課題を,ポリマー光導波路を集積化した光配線基板上に,CPUなどのロジックICと,面発光レーザーやフォトダイオードなどの光素子,その高速駆動/増幅ICなどのチップをフリップチップ実装した光I/Oを備えた光マルチチップモジュール(MCM)により解決できることを実証しました.
これらの研究開発成果は,今後のコンピューティング・システム高性能化の鍵を握る光インターコネクト技術の大きな可能性を実証したもので,きわめて先導的であり,光・電子集積技術進展への大きな貢献です.

本賞の授賞式はこの春の応用物理学関係連合講演会の会場(−−場所と日時をいれる−−)でおこなわれます.また,受賞を記念して「コンピューティング・システムのための光インターコネクト技術の先導的研究開発」に関する記念講演(−−場所と日時をいれる−−)を予定しています.是非ご参加ください.

  • 受賞者:中川 茂 氏(日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所光インターコネクト・テクノロジー担当マネージャー)
  • 業績:コンピューティング・システムのための光インターコネクト技術の先導的研究開発

2010年度 光・電子集積技術業績賞表彰委員会
  • 委員長 伊藤良一
  • 委員 片山良史,小林功郎,小柳光正,島田潤一,武田光夫,三杉隆彦,米津宏雄,和田修