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第4回女性研究者研究業績・人材育成賞(小舘香椎子賞)受賞者紹介

女性研究者研究業績・人材育成賞(小舘香椎子賞)表彰委員会
委員長 近藤高志

女性研究者研究業績・人材育成賞は,(研究業績部門)応用物理学分野の研究活動において顕著な研究業績をあげた女性研究者・技術者,または,(人材育成部門)女性研究者・技術者の人材育成に貢献することで科学技術の発展に大いに寄与した研究者・技術者または組織・グループを顕彰することを目的としています.本賞は,小舘香椎子先生(日本女子大学名誉教授,(独)科学技術振興機構男女共同参画主監,応用物理学会フェロー)の日本女子大学理学部退職に際しての感謝の会におけるご祝儀,および小舘香椎子先生からのご寄付を基金として設立されました.第4回女性研究者研究業績・人材育成賞については,機関誌「応用物理」8月号および学会ウェブページに掲載された公募に対して2013年10月31日までに推薦のあった候補者について,表彰委員会で慎重な審議・選考を行った結果,沈青氏(研究業績部門),鍜治怜奈氏(研究業績部門(若手))および遠山嘉一氏(人材育成部門)を受賞者と決定しました.

なお,授賞式は2014年春季学術講演会(青山学院大学)の初日3月17日(月)に行われます.また,研究業績部門の受賞者両氏の受賞記念講演も同学術講演会の会期中に行われますので,是非ご参集ください.

研究業績部門受賞者:
沈青氏(電気通信大学 准教授)
業績:
半導体量子ドットにおける多重励起子生成と緩和ダイナミクスに関する研究

沈青氏の業績は次世代高効率太陽電池として注目されている半導体量子ドット太陽電池の多重励起子生成と緩和ダイナミクスに関する先導的研究です.これまで活用できなかった短波長光を励起子生成に用いるためには,1光子で複数の励起子を取り出す多重励起子生成(MEG)が鍵ですが,同時にデバイス内のナノ界面に関する理解と制御が極めて重要となります.沈青氏は,ナノ構造TiO2光電極に対して量子ドットを増感剤として適用し,①MEG効果の発現と向上に関わるメカニズムの解明と実験条件の最適化を行い,②各ナノ接合光機能界面の改質と制御に還元し,光電変換効率の向上を目指しました.その結果,MEG効果を太陽電池に利用するための指針(光エネルギーが2.7Eg以上であること,また数十ps以内に電子と正孔に電荷分離させるべきであること)を示しました.量子ドット増感太陽電池において,表面修飾,TiO2ナノ構造電極の表面形態,量子ドットの種類などが光電変換特性に強く影響することを系統的に調べ上げ,PbS量子ドットにおける光励起キャリアダイナミクスを評価しました.世界で初めてのMEGダイナミクス観察やPbS量子ドットにおける光励起キャリアダイナミクスの評価などの沈青氏の研究は世界的にも高く評価されており,本賞にふさわしい方です.

研究業績部門(若手)受賞者:
鍜治怜奈氏(北海道大学大学院工学研究院 特任助教)
業績:
半導体量子ドットでの光学的核スピンエンジニアリングに関する研究

鍜治怜奈氏は,北海道大学大学院修士課程・博士後期課程を4年で修了,分光学的手法による自己集合単一量子ドットにおける動的核スピン分極の研究で博士(工学)の学位を取得した後,現在,北海道大学大学院工学研究院の特任助教として活躍されています.この間,一貫してⅢ-Ⅴ族半導体から成る量子ドットについて,電子スピンとドットを構成する原子核スピンとの相互作用について研究を行い,特に量子ドット中の核スピン集団の偏極制御,電子・正孔g因子の個別測定法の開発,電子g因子制御に成功し,また,新規核スピン分極揺らぎ測定法の考案ならびに零磁場下での核スピン揺らぎの精密測定にも成功しています.これらの成果は,多くの学術雑誌,国際・国内会議において発表され,光誘起構造相転移,電子スピンと光との間の情報変換,量子メモリといった応用にもつながるものです.鍜治怜奈氏の業績は,応用物理学分野において,新たに「半導体量子 ドットにおける光学的核スピンエンジニアリング」と呼べる研究分野を創成しつつあると考えられます.鍜治怜奈氏は,今後ますますの活躍が期待される優れた若手女性研究者であり,本賞の受賞者としてふさわしい方です.

人材育成部門受賞者:
遠山嘉一氏(東京大学工学部 理工連携キャリア支援室)
業績:
応用物理学会における男女共同参画活動とその対外的展開への貢献

男女共同参画社会基本法などの女性の社会進出を支援する法律が整いつつあった平成13年,応用物理学会内で女性研究者相互間のネットワークを構成する動きが起こり,同年7月に「男女共同参画委員会」が発足して,遠山氏が副委員長に就任されました.男女共同参画委員会は,女性技術者・研究者に関するアンケート調査を実施し,さらに理工系学協会に働きかけて「男女共同参画学協会連絡会」を結成しました.同連絡会は,平成15年に科学技術系専門職の男女共同参画の実態に対する大規模アンケート調査(回答者約2万名)を行い,その結果を「21世紀の多様化する科学技術研究者の理想像—男女共同参画推進のために—(2003年)」としてとりまとめました.遠山氏はこれらの一連の活動において同連絡会の副委員長として主導的な役割を果たされました.大規模アンケートの結果は,内閣府男女共同参画局の「男女共同参画白書」に取り入れられ,また,この問題を総合科学技術会議が取り上げ,平成18年に「女性研究者支援モデル育成事業」などの5つのプロジェクトが発足しました.遠山氏は,同事業の審査員を務めるとともに,平成18年7月からは,同事業に採択された日本女子大学において,女性研究者マルチキャリアパス支援プロジェクト推進室長として女性研究者の研究活動と育児との両立を図るさまざまな試みを行ってこられました.平成22年からは東京大学工学部理工連携キャリア支援室のキャリアアドバイザとして,学生の進学・就職相談を担当し,また応用物理学会では平成25年3月まで男女共同参画委員会などに関与してこられました.上記のように,遠山氏は応用物理学会における男女共同参画活動とその対外的展開に多大な貢献をされ,本賞の受賞者として誠にふさわしい方です.

2013年度 女性研究者研究業績・人材育成賞表彰委員会
委員長
近藤高志
委員
黒岩丈晴(副委員長),小川賀代,加藤一実,神谷利夫,後藤俊夫,島田万里子,鈴木真理子,早瀬潤子,美濃島薫